以下には、SFセミナー2000に参加した感想が書いてありますが、基本的にはいつも通りの日記であることをご了承下さい。
 5月4日の後半は、単なる東京旅行記となっています。

5月3日(水)

 東京についてから乗り換え、1時前にさいたま新都心(だっけ?)に到着。ここにこの4月に引っ越した山口さんという先輩の家があるのだ。鈍行で先に下京していた本年度京フェス実行委員長閣下加藤君と山口さんと合流。山口さんはスーツ着てネクタイなど絞めていて変だった。
 再開発中だというさいたま新都心は、得体のしれない高層建築やいかにも作ったばっかりという道がたくさんあって面白かった。

 山口邸に押しかけ、さんざん話をしたあと(岡田さんがいかにワルであるかについてなど)こたつで寝させてもらう。しかし、山口さんに指摘されて初めて気付いたのだが、何も前日から東京に来る必然性はなかったのだ。同じ高いお金を払って新幹線に乗るなら、当日の朝に来れば前の晩ゆっくり眠れたんだし。しかしそこに2人とも気付かず、前日にのこのこやって来るところが間抜けである。まあいいや、埼玉見物できたし。

 朝起きて4人でセミナー会場へ。途中のニコライ堂という観光名所っぽいお堂の上にマリアの絵が飾ってあり「生神女」と書いてあるのが気になる。私は「なまがみおんな」と読むと思ったのだが、「いきしんにょ」と読むの?それとも「いきがみおんな」?

 早めに本会会場に到着し、2階のガラス張りの壁越しに見える、仕事をしているらしい顔みしりのスタッフの方々に手を振ってご挨拶。そのあと、昼ご飯を食べる場所を探そうとしたが、よくわからないのでスタッフに聞こうと会場前まで行くと、なんと牧さん放出の古本が!!しかもこんなに安い値段で!!
 これだけでもセミナーに来たかいがあったというもの。見たことなかった元々社のウインダム『海底の怪』や(これが手に入ったのは、林さんより早く会場に着いたという幸運が大きいに違いない)、ファーマー『奇妙な関係』、ずっと欲しかった銀背『大地は永遠に』をゲット。しあわせ。

 結局昼ご飯はコンビニで買い、建物の入口のところで続々と到着する参加者に見られながら食べる。
 森さんからこないだのDASACON3での写真のプリントアウトを貰った。やったあ、マガジン編集長(塩)さんとのスリーショット写真だっ!ふふ。
 私の2つ上の先輩後藤さんや、マガジンのバイトをやめた三浦君、夜行で来た大澤君、名古屋から来た江川君、そしてやはり迷ったらしいしおしおと合流。
 受付の前で野田大元帥を目撃。ほんものだあ。と、サイン会が突然始まったので、思わず本を買ってサインしていただく。後藤さんと違い、私はあまりサインに執着がないのだが、それでも野田昌宏のサインは嬉しい。

 さて本会は、司会進行の女性2人が声をあわせて「SFセミナー2000」と叫び、漫才らしきものをしながら始まった。かなり受けていたが、やはり笑いながらやるのは駄目でしょう、というのが我々の間での主たる意見。
 最初の企画は「角川春樹的日本SF出版史」。観客がとてもたくさんいた。角川春樹は想像通りすごかった。
 SFの次はファンタジー、ファンタジーの次はホラーだとわかっていたので、そのとおりに出版した、とか。角川は泥棒ではなく強盗だ、とか。選考が大変なので、小松左京賞は候補作を選んで、あとは小松左京氏1人に順位を決めてもらう、とか。小松左京の事務所に行くと、小松左京と米朝が描いてある絵が掛けてあり、それが欲しくなったので無理を言って貰った、とか(意味不明)。
 さらに、これからはSFの時代らしい。今、角川にはSFの編集者が4人いるので、大丈夫らしい。第一直観ははずれたことがないので、絶対SFが売れる時代がくるらしい。なら、梅原先生はどうなるんでしょうね、と会場にいた人の90%が心の中で呟いたに違いない(今まで考えもしなかったけど(笑)、もしエスエフが売れ出したら、あの論理は崩壊するよな)。

 次の企画は「ブックハンターの冒険」。印象に残ったのは、牧さんの「宇宙塵に入って、こいつら年取ってるけど俺より全然読んでないじゃないかと思ったが、ただ一人俺より読んでいたのは柴野拓美だった」。す、すごい。
 あと、SFオンラインの、その筋の人が五千円持って神田で本を買ってくる企画のときに、自分は買いに行けなかったので、くやしかったから、企画が始まる直前に神田を一回りしてきた、という話。普通そんないけずはしないでしょう。さすが、物欲の人は違うよう。
 それにしても、あれだけの放出本は何なんだろう。全部ダブリ本?もう読まないからよい本?それとも、今からいくらでも手に入るからみんなに売ってあげようという寛大な御心の現れ?

 次は「日本SF論争史」。森さんが出演していて、結構しゃべって会場の受けをとっていた。『日本SF論争史』の刊行についての話が主で、その本の趣旨についての説明がされていた。
 論争はくだらない個人攻撃の部分が面白いのだが、『日本SF論争史』は学術書であるし、後から見返して論争の趣旨がわかるように、その論争を代表する文章だけを選んで載せたのだとか。
 論争というのは、はじまって両者が意見を述べたあと、「じゃあSFの定義は何だ」と言って、相手の出鼻をくじく人が出て、そうこうしているうちに、第三者がどなりこんできて「この論争は不毛だ」と必ず言う(笑)らしい。あと、昔から論争の対象となるのは、ハインラインと小松左京だとか。
 巽さんのしゃべりかたは、いかにもまじめであまり面白味のあるものではなく、なんかきっとゼミも大変なんだろうな(根拠不明)と思ったが、語り口はともかく、内容は面白かった。

 その次は「新世紀の日本SFに向けて」ということで、新人作家パネル。印象的だったのは、三雲さんの語尾をのばしたしゃべりかたと、森青花さんが、今年は『夏への扉』の主人公がやってくる年だと言われたこと。そうなのか。しかし、たとえ今年中にお手伝いロボットができても、女中という名前は絶対に付けられないよなあ。

 2日続けての睡眠不足と、10分休憩をはさんでの企画の連続と人の多さでこの頃から大分疲れてくる。

 最後は『小中千昭インタビュー』。私は小中千昭という方がどういう人なのか全然わからなかったので、印象が薄い。まほたいの人なんだなあ、というのと、原稿取りたてに追われているらしいというのと、髪型がいい感じだったこと以外、よく覚えていない。

 さすがに企画5つは疲れたなあ、というのが正直なところ。興味をひく企画ばかりではなかったところが敗因か。一番おもしろかったのは角川春樹で次が論争史かな。

 本会が終わって合宿場に移動。しかし、今年は本会会場が例年と違うので行き方がよくわからない。お茶の水から地下鉄に乗ったのだが、乗り換えているうちになぜか途中でお茶の水をもう一度通過するはめに…。まあ、気にしない。そのため、ふたき旅館についてご飯を食べに行った時には、既にオープニング30分前。ご飯を10分で食べて、急いで旅館に戻る。

 合宿大広間に行くと、ああ2年ぶりなんだなあ、と感慨が。オープニングはいつものように諸注意から始まった。企画紹介のときに、三村さんがいなくて「三村さんはバスジャック見てる」と声が上がったので、私は「ああ、バスジャックというアニメをやってるんだ」と思ったのだが、実際にジャックされていたのね。ちなみにしおしおは「お風呂を占拠している」と思ったらしい。
 あと林さんの「最近死んだ作家のなかで最も有名な作家スラデック」はよかった。その後の(塩)さんの「最近死んだ作家のなかで最も有名な作家スラデックと、それほど有名ではないヴァン・ヴォクト」もすごかったし。

 有名人紹介の最後で、小浜さんがHP開いている人、と言ったとき、こちらをみた森さんの顔をみて嫌な予感がしたのだが、やはり森さんの煽動により自己紹介させられてしまった。このようにして、1回生にしてセミナーに連れて行かれたり、SF研の会長にさせられたり、挙句の果てに京フェスの実行委員長にさせられたりしてきたのだ。毎回同パターン。なんか最早あきらめて、抵抗もせずに自己紹介した自分が悲しい。しかしヒラノさんまで煽動するこたないじゃありませんか(しくしく)。
 それにしても、小浜さんが顔知ってるから、てな理由じゃなくて、有名な人を紹介しないと意味ないのに。でもそのあと、安田ママさんやヒラノマドカさんも紹介されていた。安田ママさんて初めてお見受けしたのですが美人ですね。

 企画は、なま巽孝之にも興味はあったが、やはり「進化SF総解説」に行くことにした。のださんの説明はとてもわかりやすかったが、それでも端で聞いていると生物の知識のない人にはわかるのかなあ、と疑問に思った。これはのださんの説明が悪いということではなく、もしかして、分子生物って知識のない人には、私が物理に対するのと同じように難しいのかもしれない、と思ったというだけだ。いちいち説明してたら時間がいくらあっても足りないし。それでも、時間の大部分は説明に費やしていたけど。
 後の方は作品の話をしていて、私がびっくりしたのは、『フレームシフト』で、フレームシフトを起こす原因はイントロンにある、と書いてあったのは、トリプレットコードのシノニムのことをイントロンだとソウヤーが誤解しているのかも、というのださんの説。そうかもしれない。また突然イントロンなんて出してきて話がとぶなあ、と思っていたのだが。
 あ、あとここで書いても仕方ないんだけど、遺伝子治療は、アメリカの臨床実験では死者が出てしまったし、遺伝子を書き換えるなんてことはまだ全然出来ません。遺伝子治療の話はあの場ではちょっとしかしなかったけど、なんか楽観的に進んでいたので。

 で、次に行ったのが「フェミニズムとかSFとか(やおいとか)」で、今回は「初心者および、フェミニズムとかやおいとか理解できない人禁止」と事前に告知されていたために、参加者は少なかった。私の身の周りにも、行きたいけど初心者だし、といって行かなかった人が多数いたから、ほんとは人気だったのかも。
 実は私はやおいは初心者どころか、頭の中にやおい回路がきっとないに違いないど素人なのだが、小谷真理さんが来られるというので、どうしても見たくてずうずうしく行ってしまった。キャラを借りてきて、男の人と男の人がきゃあ、という気持ちはよくわかるのだが、きすだのせっくすだの言われると、もう駄目。
 企画は最初っから、がんがんやおいの話で飛ばしていた。小谷さんは美人で、さらに話に手の振りがついていてとてもかっこいい。あと、中田雅喜さんが来ておられたが、実にすべてにおいて強そうな方で、「やっぱりこういう人なのか」と心底から納得した。

 アメリカでは、やはりキリスト教国なのでホモには厳しいし、女性がポルノを書くのは白い眼で見られるので、やおいはブラックマーケットでしか売られないのだとか。ファンジン売り場とかに行って、スラッシュある?とか聞くと、奥のダンボールから出してくるらしい。凄すぎるよう。結構フェミニズム系の女性作家はこっそりやおいを書いてるんだとか。ル・グィンのやおいとか、ティプトリーのやおいとか、あったら見てみたいよなあ。
 アメリカのやおいK/S(カークとスポック)はなぜカークとスポックなのかというと、スポックはバルカン星人なので、ある一定の性周期になると性的におかしくなってしまう。だからその時なら仕方がない、ということで書くほうも読む方も受容できる理由になるのだとか。なるほどー。
 バルカン星人の性器はどうなってるだの、やおいがパターンが出尽くしてしまうと、変な話がたくさん出てきて面白いだのの話もあったが、慎み深いので割愛しよう。その場では誘い受けだの、下克上だの、雪山遭難物だの、難しい単語が飛び交っていた。

 途中で小谷真理さんが、参加者がやおいに目覚めた時はどういう時か聞きたいと言われ、各自やおい体験を語ることになってしまった。大ピンチ。実は初心者どころかやおいものではないとバレてしまうのではないか、とどきどきしていたら、私も指名されてしまった。こ、恐かったよう。
 実は違うんです、でも高校生のとき、周りにいっぱいいましたーという話を代わりにする。『沈黙の艦隊』のやおいの人もいたなあ。なんかそれで自衛隊ブームになって、自衛隊の学校受験した人も多数いた。
 一番時間が経つのを忘れた楽しい企画だった。参加者設定を無視して行った甲斐があったというもの。

5月4日(木)

 最後は「ライブ・スキャナー」に行くつもりだったのだが、行ってみたらまだやってなかったので、「ネットワークのSF者たち Returns」をのぞいてみると、なんか抜けられない状態になってしまった。
 結局、まさしく「森太郎 v.s.小浜徹也」という企画になっていた。つまり、去年の「セミナーで得たものはセミナーに返せ」発言をめぐり、その真意を正す企画になっていた。その場の大勢としては、「小浜さんの書き方が誤解をまねいていた、しかもその後ネット上で議論を続けなかったのが悪い」という感じだったのだが、そこに「セミナーに来て、何も発言せずに帰っていくだけの客をどう思うか」とかDASACON勢の「いきなりもうファンダムの一員だと言われても訳わかんねえ」という話が出て、まとまりはないし、怒ってる人多数だった。
 こうなったのは、小浜さんだけの責任ではないと思うが、小浜さんがいろいろ前言を翻す発言をしまくるために、DASACON勢の怒りをかっていたのは間違いないだろう。しかし企画はなんと1時間半で終わってしまった。私はこういう話は朝まで延々続くんだと思い込んでいたので、たいそうびっくりした。その上、森さんが小浜さんに勝っているのにも感心した。

 しかし、ヒラノマドカさんや溝口さんはたいそうお怒りであった。溝口さんはすぐオークションに行ってしまったが、ヒラノさんのお怒りときたら、とてもこわかった。どうやら森さんが、DASACON勢(いや、こういう書き方はよくないのだが)にとって「有意義」と考えられる別の話をする予定だったらしい。あの状況から考えて気持ちはわからないでもないが、集団でする企画なんだから、思うとおりの話にならなかったことに対して、そんなに怒っても仕方がないと思うんですけど。また別の席でやったらよろしいのでは。というか、よわよわの私としては単にとても恐かった。

 でも、以前に出た話なのかもしれないが、なかなか面白い話も出ていた。DASACON勢と呼ばれても、森さんやのださんや林さんのようなコンベンション経験のある人とそうでない人とは違う、とか。だから、上記のDASACON勢というのは、DASACON以外コンベンション経験のないDASACON勢ということで。あと、安田ママさんが、「SFは私が読んでいる本の10分の1に過ぎないので」と言われたのに驚いた。そうかあ、10分の1であんなに濃くなるのか、すごい。あとは、SFへの帰属意識がない、と強調されていたり。

 それに対し、「コンベンションに出てきて、発言をしなかったり、友達を一人も作らず帰ったり、コンベンション以外での知合いとだけ楽しげにしゃべって帰っていく客」は歓迎されるかという議論もされていた。途中で怒ってどっかに行ってしまったみらい子さんやちはらさんが参加していた。
 そこで思ったのは、じゃあ私はどうなのか、ということ。初心者がしゃべらないのは、仕方がないらしいのだが、私は今年で7回目、初心者とは言えない。でもやはり企画の途中ではあまりしゃべれない。
 誰もがちはらさんのように、集団の中ではきはきとしゃべれるわけではないのだ。それは知識がなく話に口を挟めないためでもあり、口を挟む勇気がないためでもあり、話の方向を変えてしまうのではないかと恐れるためにタイミングを計っているうちに機会を逸してしまうからでもある。
 おまけに友達を作ったかというと、いえ知合いがいないわけじゃないけど、そう言われるとちょっとどうかという感じ。
 でも、参加して楽しいし、それにみんながしゃべりだしたら、企画は全く進まなくなるのではないの?やっぱり駄目だろうか?

 ちはらさんが、私は最初大学SF研の人達とばかり話していたが、それでは駄目だと思って、他の人と話すようになった、という話をしていたが、それとDASACON勢とはちょっと違うと思う(いやちはらさんが関連付けていたかどうかははっきり覚えてないんだけど)。大学SF研では、新参加の人は先輩に連れられてくるわけで、そこで先輩の知合いと話をしたり、他大学の新参加者と話をしたりして、他のセミナー参加者と同化していく。大学SF研に所属している限り、すでに同化された存在であるともいえる。
 でも、DASACON勢は個々に別々の背景を持った集団で、そもそも同化する気があるかどうかもわからないものだし。

 でもね、これが京フェスだったら、わあい参加者が増えた、で済むような気が(笑)。

 恐ろしいネットワーク部屋を脱出して、スキャナーの部屋をのぞいたり。あちこちで書かれているとおり、山岸さんと中村さんが、河出文庫から年代別アンソロジーを出すらしいので、そのお話がされていた。とっても楽しみ。河出だからきっと高いけど、頑張って買おう。

 その後は大広間で円座。なんか身分が何文字か、という話になった。「45文字なんでしょう」とか言われ、ええ、私30文字後半だったと思ったんだけどなあ、と思いつつも周りから言われるままにプログラムブックに身分を漢字で書く。まあ、41文字くらいでしょうか。しかし、家に帰って日記をみても、39文字と書いてある。なんでそんな話が出たのだろうと思ったら、のださんの日記に45文字と書いてあった。のださあん、39文字です。いや、別にどうでもいいんですけど。

 林さんが、「いやあ、今日は僕は名大の人としか話してませんよ。やっぱり初対面で話をするにはウインダムを読んでるくらいの基礎がないと」ってそれじゃあまず友達ができませんねえ(笑)。衝撃的だったのは、林さんは中野ブロードウエイの近くに出勤しているので、あの辺は毎週のように荒らしているという事実を知ったこと。そ、そんなあ。3年振りの楽しみがあっ、しくしくしく。
 名大の野呂さんが、トリフィドを折っていた。なんか膨隆した部分から1本足が出ているので、「これなんですか?」と聞くと伸びる鞭らしい。でも鞭は花の中から出てるんですよ、ってすいません因縁つけて。そのままでも折り紙としては十分すごいです。

 大広間でだらだらしていると、明るくなってきた。ふとテレビを見ると、バスハイジャック犯に強行突入が行われていた。犯人は17歳。この頃17歳の犯罪事件が多いので、来年か再来年にSF研に入ってきた1回生を前に出して「1983年生まれには犯罪者が多い?」てな題のパネルで、各自のSF体験を語らせ…というようなひどいことを考えたりする。犯人の身柄も確保されたことだし、と思って5時過ぎに寝る。

 8時過ぎに起きてエンディング。恒例らしいスタッフ紹介があり、無事終了。マクドで朝ご飯を食べたあと、秋葉原組(岡田さん、江川君、山口さん)と、神田組(後藤さん、三浦君、加藤君、しおしお、大澤君、私)に分かれて物欲の旅に出発。
 神田の古本屋はゴールデンウィークにしてはわりと開いているような気がした。6人もいると、どんな古本屋でも誰かが喰われてしまうので、なかなか先へ進めない。昼過ぎまで亀の歩みで古本屋をうろつく。しかしあまり収穫はなかった。

 お昼を食べている間に、三浦君が『ななつのこ』のどこを気に入ったのか、という話になった。その場にいた、5人全員がなぜか『ななつのこ』を読んでいたのだが、そこまで誉める理由がわからない、ということで聞いてみると、どうやら「ここ最近で読んだ中では、表紙の絵もストーリーも値段もいいし、一番お得だから。特に表紙の絵が気に入った」ということらしい。なんだ、そういうことか。やっぱり直接聞いてみないとわからないもんやねえ。納得。確かにお得感はあるような。

 そのあとは、8人で中野にぞろぞろ。みちみちOさんが「ノースリーブ」という言葉を知らなかったり、Mさんは「ノースリーブ」を「キャミソール」のことだと思っていたりという事実が発覚。すげえ。昔から常識人で、SF研の行動の制御を一身に担っていた後藤さんは「ファッション関係は知らないんじゃない?」と冷静な一言。しかし後にSさんが「ガイガーカウンター」を知らないことが発覚したりしたので、やはりみんな常識がないのかもしれない。いや私も気をつけなきゃ。
 中野ブロードウエイでは、比較的納得のいく値段をつける狭い古本屋と、納得のいかない値段をつける鬼畜な古本屋を覗けたのでわりと満足。三浦君に教えてもらって「親指P」を上下100円で買えたし。

 この頃になると、荷物の重さは耐え難くなってきた。勿論こうなることは予想されたので行きの荷物は少なくしたのだが、それでも重い。ハードカバーを買ったのが悪いのだが。
 その後、池袋に向かうことになった。デジコの展覧会に行くらしい。しかし、私の目的はデジコではない。岡田さんが電車の広告で見つけた、サンシャインビルで開かれているらしい「たれぱんだまつり」。
 しかし、みんなもう疲れきっていてデジコ展覧会前でぐったりと座り込んでいた。考えてみれば、私も3日で10時間くらいしか寝てないんだし、もっと死んでてもよいはずなのが、結構元気だった。これも循環器科や当直生活で鍛えたおかげかと思うと……。はじめてセミナーに行った1回生のときなど、前日はよく眠り、セミナーで3時間も寝たのに、翌日はふらふらで上の人たちについていくのが精いっぱいだったのになあ。
 みんなをデジコ展前に残して、岡田さんとサンシャインビルに出発。しかし岡田さんも疲れきっていて、たれぱんだまつりの横のグッズ販売&休憩コーナーで休んでしまったので、結局私一人で「たれぱんだまつり」の展示をみることに。なんかお父さんに連れてこられた子供みたいだな。

 「たれぱんだまつり」には、動くめかたれぱんだや、たれぱんだの渡りのディスプレイがしてあり、原画展もあった。7月にOVAが出るらしく、その宣伝もやっていた。
 そのあと、グッズ販売コーナーに行くが、どうも物欲がでない。たれぱんだ専門ショップでしか売っていないという、色つきたれぱんだぬいぐるみもかわいいのだが、どうも買う気がしない。しおしお説によると、眠気と疲れを物欲で押さえているかららしい。確かにそんな気がする。
 それでも、ずっと欲しかったマグカップ(近所で売っているのはどうもデザインが気に入らなくて買わずにいたのだ)を手に入れた。これでミッフィーマグカップで日夜お茶を飲んでいる先輩に対抗できる。それとたれぱんだ人形焼きをお土産用に2つ。研究室の同期の子に人形焼きを買ってこいと厳命されていたのでちょうどよかった。

 それから、少し元気を回復した岡田さんと、デジコ展に戻ることに。途中でコンビニに寄って、荷物を宅急便で送る。明日は帰りに直接実家に行って犬を下宿に連れてくる予定なので、こんな重荷を運んでいる訳にはいかないのだ。
 その最中にデパートに「古本ガレージ」の垂幕を発見。当然私は行くことを主張したが、岡田さんは私のことを鬼のように言う。なぜだ、なぜ行きたくないのだ?
 デジコ展で、残りの人達と合流、ろくでもない後輩どもに付き合った常識人後藤さんをお見送りして、古本ガレージを目指す。しかし、私が垂幕の位置を間違えたために、うろうろすることに。すみませんでした。
 辿り着いた古本市は、思ったよりまともだった。『鉄の夢』が三千円台で売られていたりと、SF系はべらぼうな値段だったけど。

 それからご飯を食べて、品川駅へ。実行委員長閣下がゴミ箱から拾ってきたという新聞を敷いて、夜行の入線を待つ。他にも待っている人がいたが、私としおしおが歩いているのを見て、デジコのカードをしている一団が「ほら、似たような人がいる」と発言。なんじゃそりゃ。どこがどう似てるというんだ、おら。
 デジコはテッセルに似てるねえ(いたずらに可愛くて劣情をそそってそうなところが)などと無駄話。実行委員長閣下がサングラスかけて、タオルで頬かむりすると、モデルになれそうなほど典型的な泥棒姿であることも発見。京フェスでやって。

 電車がきて、席をとってしゃべっていると、サングラスかけたチンピラ風の男が「おい、お前ら電車が動き出してから少しでもしゃべったらどうなるかわかってんだろうな」と因縁をつけてきた。どうみても精神的におかしい人だったし、バスジャック事件の後だけに嫌な感じ。ということでとっとと別の車両に移動。
 すると、移動した途端、今度はしゃべってもいないのに、またしても少しおかしそうな中年の女の人が登場。寝るんだから夜は騒ぐなという趣旨のことをぶつぶつ言う。何なんだ。この手の夜行は何回か乗っているが、こんなことを言われたのは初めてだ。先ほどの男とグルで、因縁つけて金でも取ろうとしているのかとも思ったが、どうもそういう節も見られない。
 よくわからないまま、何しろこっちも眠いので就寝。わりとよく眠れた。


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