5月15日(土)

 8時30分に病院へ。昨日入院の患者さんの処置をして、11時に一旦帰宅。眠い。うとうとしながら、患者さんの血中カリウム値が低いのに補正するのを忘れた、とか心筋梗塞の患者さんのCPK(酵素の一種)を2時間おきにチェックするのを忘れたとかいう悪夢をみていた。15時頃なんとか起きて、16時過ぎに再び病院へ。今日は当直。初めてプレサリオ君を外に持ち出した。
 21時に呼ばれたのがはじまりだった。細かい用事で呼ばれ続け、0時に狭心症の発作で呼ばれたら、発作がおさまるのに2時間かかった。一段落ついてベッドに入ったのは2時半、6時に同じ患者さんの不穏で呼ばれる。

5月16日(日)

 そして、7時に携帯が鳴った。不吉だ。私の携帯の番号を知っている人は少ないし、その中でも朝から電話をかけてくるような人はごくわずかだ。案の定親からの電話で、具合が悪いのだという。すぐに病院へ行くように言うが、親は両方とも危機感がないのかぐずぐず言ってるのでいらいらする。下手をしたら死にうる病気かもしれないというのに。
 当直が明けて、どうしても必要な仕事を片づけると、実家へ。病院から帰ってきた親が寝ていたが、診察した限りでは、このまま家に寝かせておいたらよくなる病態とは思えない。親が行った病院ではちょっと点滴をしてくれただけらしい。
 実家の近くの救急診療をやっている病院に電話をしてみるが、どこの病院も、親が行った病院での処置以上のことはしてくれないという。まあ、日曜日だから仕方がない。救急車でも呼べば話が違うのだろうが、親が恥ずかしいからそれだけはやめてくれ、と頼むので(しかし私が病気になったときはすぐに救急車を呼んでいたが)できなかった。
 仕方がないので、しぶしぶうちの病院まで親を連れて行く。朝今日の日直の先生を調べたら、たまたま一番疑うべき病気の専門の先生が今日の日直だったので、一応連絡だけはしておいたのだ。
 その専門の先生が親を入院させてくれて、治療もしてくれた。ありがたいことである。しかし、周りは全部知っている看護婦さんだもんなあ。親が妙な行動をしたら恥ずかしいぞ。だけどまあ、実家の近くの病院に入院させても面倒をみにいけるわけじゃないし、かえって良かったのかもしれない。
 今日偶然東京からうちに仕事のついでによった従兄弟が、入院騒ぎで身動きとれず、結局親のお見舞いに来ていたのがかわいそうだった。
 救急室から入院病棟へ、親を載せたベッドを押していたのを、循環器病棟の看護婦さんに目撃され、一瞬にしてうちの親が入院したことがそこら中にばれていたのが恐ろしい。
 親の入院グッズを買いにイズミヤへ。たれぱんだグッズがたくさんあるのに驚く。どの売り場に行ってもたれぱんだグッズがあるのだ。たれぱんだごみ箱にたれぱんだパジャマ、たれぱんだうちわ、エトセトラ、エトセトラ。思わずたれぱんだパジャマとレターセットを買ってしまう。

5月17日(月)

 親は大分軽快していたので、ひと安心。近所の人がお見舞いに来てくれていた。
 仕事の合間に親を見に行きつつ、お仕事。このところ仕事が少な目なのが幸い。さもなければたとえ同じ病院内にいても、見舞いにも行けやしない。お見舞いの人が置いていったとかいうゼリーを親がくれたので、ありがたく奪い取っておやつにする。
 循環器の支配者の某先生が午後から休みをとったため、先週は3時間くらいかかったカンファレンスが、1時間で終わる。めでたい。

5月18日(火)

 6月からはじまる予定の病院の新オーダーシステム(2000年問題対策も兼ねているらしい)の説明があった。しかし、今のものよりかなり遅い。20日にどれくらいの負荷がかかるか実験するらしいが、こんなに遅いのでは、いっせいに入力したら止まるんじゃないだろうか。不安すぎるぞ。

 仕事を終えて帰ろうとすると、携帯に8時30分に着信、公衆電話より、とかいうメッセージが出ている。これは何だ。思い当たるふしは、以前女の子の新入生が来たら行くから携帯鳴らして、とSF研の会長閣下に頼んだことしかない。今日は火曜、例会の日だし。ということで、そのままA号館へ。あんなところに行くのは久しぶりである。
 携帯を鳴らしてくれたのは、やはり会長閣下だった。なんと女の子の新入会員がいる。万歳!私が何年可愛い後輩の女の子が入ってくるのを夢みてきたことか。7年目にして初めて報われるのね。
 『幼年期の終わり』が好きという海外SF派。有名どころは結構読んでいる。そしてなんと出身中学・高校が同じであった。驚きである。どうものりが合うなあ、と思っていたら、やっぱりね。一緒に通ったことがないほど年が離れているところが悲しいけど。
 おそらくこれからまた女の子は入ってこないと思うけど、1人で男どもの中で頑張れそうな、頼もしい感じである。これで安心。
 ウインダムを読ませようとすると、「読みます、読みます」とのこと。やったあ、洗脳できるぞ、林さんのように。

5月19日(水)

 昨日遅くまでしゃべっていたので、吐き気がするほど眠い。やっぱり体力がついていかない。
 今日冬樹さんのHPに行ったらSETIの例の一般家庭で解析させる計画のところへのリンクが張ってあった。冬樹さんのページは、まず面白いのだが、こないだの普通人ランキングといい、面白そうなイベントへのリンクがあるところが素晴らしい。SETIのあの計画、私でもできるような、あんなスクリーンセーバーになっているとは知らなかった。早速落としてインストールしてみる。

5月20日(木)

 と、日記を書き終わり、さあ寝ようかと、布団に入ろうとしたところでポケベルが鳴った。午前1時である。夜中になるポケベルはろくなことがない。90%以上病院に来いというベルである。案の定「AMI(急性心筋梗塞)が来ました。先生1番なので(入院当番が1番)救急室のほうへお願いします」だって。まあ、自分の患者が急変して心肺蘇生中です、すぐ来て下さい、なんてのよりましだが。
 処置が一段落ついたのが、午前5時。それから家に帰ると、ほとんど寝れないし、寝過ごす危険性もあるので、医者がご飯を食べたりするための3畳くらいの部屋においてあるソファで横になり、2時間ほど惰眠をむさぼる。しかし大きい病院ならどこにでも仮眠室(ベッドが置いてある)くらいあるのに、うちの病院ときたら……。

 当然、その日は眠かった。夕方はカルテを書きながら知らず知らずのうちに寝ていたし。起きたらカルテに訳のわからないことが書いてあった。小人さん恐るべし。
 今日は循環器に来てから15日目。4分の1が終わった。あと今までの3倍。
 家に帰ったのは22時前。ご飯を食べたことは覚えているが、その後の記憶がない。朝起きたらきちんと布団の中で寝てたから、きっと寝る準備したんだろうなあ。

5月21日(金)

 一緒に循環器科を廻っている同期の男の子が、夕方突然、今頭をラスカルのエンディングが回っている、とか言い出した。ラスカルのエンディングなんてよく覚えているな。それどころか、ヤマトもエンディングがすばらしいよな、と今度は「真っ赤なスカーフ」を歌い出した。なんなんだ、いったい。

5月22日(土)

 久しぶりに9時間ほど眠れた。だらだらしているうちに15時過ぎになり慌てて病院へ。しかし、もっと早くから来んか、ということで看護婦に睨まれた。どうしてお前らに睨まれなあかんねん、全く腹が立つ。こないだ看護婦は完全週休二日であることを知ったばかりなので、余計に腹が立つ。
 今日は当直。当直は暇だった。新入院なし。コールもほとんどなし。

5月23日(日)

 昼まで、入院中の親の相手。
 夕方から衝動的に『永遠の終わり』を読み返した。

5月25日(火)

 今日親が退院した。
 SF研の1回生の女の子(しおしおという)の洗脳を開始した。

5月27日(木)

 病院の新オーダーシステムの導入は、2ヶ月遅れて8月からに決まったらしい。おいおい。
 ピーマンの肉詰めを作った。セロリを中に入れたらおいしかった。ローリエも入れた。とてもおいしい。天才かもしれない。でも2時間かかった。少ししかない自由時間をこんなことに費すとは。

5月28日(金)

 朝からPTCA(心臓を栄養している血管を風船みたいなもんを使って拡張する治療)の付き添い。午後からもPTCAの付き添い。
 午前中2時間、午後3時間カテ室(PTCAをする特殊な部屋)に入ったきり。病棟では副婦長さんが、「今日はあの先生はカテ室勤務だから」と言っていたらしい。しくしく。
 6時から飲み会に連れて行かれるので、急ぎに急いで仕事。大慌て。

5月29日(土)

 病院へ行くと、新入院の患者がいた。その患者の胸水を1L抜く。60ccの注射器で17回。手がしびれた。
 今日はSF研の新歓コンパ。なんか新入生がとてもたくさん(7人くらい?)来ていた。びっくり。二次会はカラオケをまず2時間。その後さらに2時間。

5月30日(日)

 とても眠いのに9時半には目が覚めてしまった。明け方右ふくらはぎにこむらかえりを起こして、激痛に苦しむ。起きてからもまっすぐ歩けないぐらい痛い。なぜだ?
 12時から邪悪なカラオケを施行した。恐ろしいので、カラオケボックスでは偽名を名乗り、嘘の電話番号を教えておいた。それにしても料金が安かった。7人で入ったせいもあるけど、3時間で一人450円。

 4時前に病院へ。今日は当直。循環器科の病棟はおそろしいまでに落ち着いて静かだった。
 当直は、耳鼻科の患者が狭心症発作を起こしたみたいだから来てくれだの、整形外科の患者が不整脈だの。それにしても腹が立ったのは、午前2時半にコールされて電話すると、整形外科の看護婦さんで、「さっき診てもらった患者の血糖が高くて(別に夜中に大騒ぎするほど高い訳ではない)、どうしていいか(ほっとけよ)、あっ、今主治医と連絡がとれました、いいです、ガチャッ」おい、なら呼ぶなよ。
 当直中に『ER』を見た。今日の『ER』はすごかった。ナゾの日本人外科医が出てくるし、カーター君は、突然あの柔らかそうな金髪の小児外科医に押し倒されるし……(脈絡もなくああいうことをするのがアメリカ人なのか?)。

5月31日(月)

 一昨日胸水を抜いたせいだと思うのだが、左手が痛くて上げられない。昨日から痛かったが、今日はカルテを持てないくらい痛い。50cc注射器を17回引くくらいで、手が上げられないほどの筋肉痛になる私がやわなのか、それともそれほど50cc注射器を引くには力が要るととるべきなのか……。
 缶詰のミートソースに、セロリとピーマンと茄子を入れて煮て、スパゲティにかけて食べたらとてもおいしかった。セロリを入れると何でもおいしいような気がする。


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