4月16日(金)

 仕事は朝から割と暇。特にこれということは起きない。昼間は眠くて死にそうだった。
5時20分ころ脱兎のごとく抜け出して歯医者に。詰めものをしてもらったが結構痛かった。しかしこれでもう歯医者に行かなくていいぞ。

 家に帰ると、実家の親が東京の親戚の結婚式に行くのでうちに預けてきた犬がいる。もう10歳だというのに、相変わらずこの世のものとは思えないくらいかわいい。だが一緒に遊んでいたら、久しぶりの犬の毛で目がやられて腫れてきた。そこへ間の悪いことに病院からのポケベルが鳴った。担当患者の一人の呼吸状態が悪化したとのことで、病院に行かなければならない。しかし鏡をみると両眼とも真っ赤で、特に左眼はお岩のようだ。どうしよう、患者の前に出れないとうろたえ、効かないが一応眼薬をさして病院へ向かう。
 当直の先生が、「呼んでごめんね。歯医者は行けた?」と聞いてくれるのに対し「歯医者は行けたんですけど、眼が……」。どうした、と驚く先生に「犬の毛のアレルギーで」「あんた下宿に犬の毛がいつもあるんか?」「いえ、今日は事情があって下宿に犬がいるんです」とかいう間抜けな会話をするはめに。
 同じく当直の研修医の先輩は看護婦さんに「眼帯ある?」と聞いてくれているが、内科病棟なので眼帯がない。結局看護婦さんがガーゼを左眼にあててテープで止めてくれた。だが眼鏡がかけられなくなり、おまけに片目はふさがれているので、物が見えない。あちこちぶつかりながら、患者の診察に行き、周りが見えていないので患者の家族を押しのけたりしながら注射などする。

 患者の状態は大したことなかったので、とりあえず処置をして家に帰る。たあ(犬)は眠っていたが、私が帰ってきたので、一応しっぽだけ振ってみせる。この辺がこ子のえらい点である。私が犬なら無視して寝ていそうである。

4月17日(土)

 昨日来たたあに9時頃起こされる。まず枕を占領され、顔の近くでぐぐぐぐぐとうるさく騒ぐ。土曜日くらいゆっくり寝かせてくれえ、と言っても無駄なので仕方なく起きて散歩に連れていく。
 帰ってきてご飯を食べて、1時間くらい惰眠をむさぼるが、大腸菌が待ってるのでそうそうゆっくりしてはいられない。1時くらいに家を出て大学に。大腸菌をスピンダウンだけして、逃げるように病院へ向かう。昨日急変した患者は落ち着いている。
 病院から帰ってきてHTMLのお勉強。意外と簡単だが、やっぱりソフトがあったほうが楽だろうな。でも基本は知っといた方がいいような気もするけど。

 夜、たあを親に返しに京都駅に。烏丸中央口の改札でこっそり犬の受け渡し。お返しに結婚式の引き出物(通販で選ぶやつ)やチョコレートケーキをもらう。
 帰りにジュース買いにコンビニによると、なんとカルシウムパーラーとビタミンパーラーで、「たれぱんだ あげる!」キャンペーンをやっているではないか。3コースあってフリーク度100%、70%、50%となっているのがナゾだが、どうやらたれぱんだのぬいぐるみが主だとフリーク度が上がって、キャラクターの絵がついている小物だと下がるらしい。これからは毎日カルパラだ。
 何年か前、食パンのミッフィーちゃんのかばんが当たるキャンペーンのときも、食パン自体はかなりまずかったが頑張って食べて5枚くらい葉書を出したが、当たらなかった。しかし今回はミッフィーかばんより欲しさが断然上だ。しかもあの食パンよりはおいしい。頑張るぞ。

4月18日(日)

 朝から雨模様。昼まで寝ていた。
 今日わかったこと。クロレラは1日30錠飲まないといけないらしい。クレメジンか!(腎不全のときに飲むお薬。1日30錠以上飲んだりするので、油断して飲み忘れるとすぐに恐ろしい数がたまってしまう)
 いくら便秘に効くとはいえ、私にはそんなことはようできん。

4月19日(月)

 たれぱんだスクリーンセーバーをみた。先輩が知り合いから入手し、ノートパソコンに入れたらしい。みればますます欲しくなる。たれぱんだカレンダーもとてもかわいい。

 大学に行ったら、少人数で授業形式の論文抄読会をやっていた。私はそもそも授業というのが大嫌いで、中学高校時代は、授業中は漫画を読んだり手紙を廻したり、パズルを作ったり、SF作家の名前を暗記したり、まともに聞いた覚えがなく、「一見まじめに見えるのに、本当は授業中にこんなことをしている人なんて知らなかった」と、隣に座った人に驚かれた私だが、この頃は何が書いてあるかよくわからない教科書を自力で読む生活を送っているので、誰かに説明してもらえる授業形式が好きになってきた。

4月20日(火)

 救急病棟に患者さんに会いに行くと、偶然前にみていた患者さんに会った。90歳近いおばあちゃんで、息子が入院したので(救急室でその息子を最初に診察し、入院させたのも私なのだが)お見舞いにきたのだが、入院していたときと違って今はすっかり元気である。私からその患者さんを引き継いだ同期の研修医(私たちはローテーションで各科(消化器科とか循環器科とか)を2、3か月ごとに廻っているので、長期入院の患者さんは研修医同士で引き継ぐのだ)も偶然その場にいあわせ、おばあちゃんはすっかり喜んでいた。「今日はよい日だ、こんなに嬉しいことはない」会っただけで、こんなに喜ばれるとは幸せなものである。

 もうすぐ、5月になってしまう。5月から私は循環器科を廻ることになるのだが、この循環器科というところは、とても忙しい上に、上司の医者たちが短気で、看護婦さんも性格がいまいちな人が多く、雑用が多い科で、ここを廻る研修医は精神的に参ったり、そこまでいかなくても胃薬や鎮痛剤を常用するようになった人も多い。私は去年の11月から3か月循環器科を廻っていたのだが、4Kg痩せたし(たいがいみんな痩せる)、免疫力が低下していたためか、3回も39度近い熱が出る風邪にかかったし(勿論研修医には人権がないので、熱が出ていようが仕事を休むことは許されない。6時間おきに解熱剤を飲んで働くことになる)、人並みにひどい目にあった。

 しかし、よい経験をしたと思ったのは、「奴隷状態」を経験したことだ。よく、強制収容所にいた人とかが、開放されても開放されたことが全く信じられない、とか奴隷だった人が、開放されても命令されなければ何をしていいのかわからない状態になるとか聞くが、それと同じような状況に陥ったのである。
 1月末、2月からは別の科に廻るので循環器科から出れる、と頭では判っていても、その別の平和な科を廻るという自分が全く想像できず、あと1週間で2月だと判っていても、永遠に2月は来ないような気がしていた。自分の中ではかなり確信していたために、永遠に2月が来ないと思えてもそれが悲しい訳ではないのだ。2月1日、娑婆に出てからも、出られたことが信じられない気分がしばらく続いたことは言うまでもない。こんな経験はめったとできるものじゃないと思う。
 今回は2か月のローテーションだが、考えると気分が暗くなるため考えないようにしている。

4月22日(木)

 昨日は当直。睡眠時間は3時間半くらい。入院が2人。昨日の当直は、新入院の患者と重症が多い病棟の患者だけをみていればよい当直だから、睡眠時間3時間半というのは平均くらい。でも当直室のそばが集中治療室だから、モニタの警報音がうるさくて熟睡からは程遠い。
 京大SF研の新入生勧誘ビラは今年も素晴らしい。やはり森田くんは優秀だと思う。しかし、新会長らしい加藤君の名前がかように役に立つとは。すばらしい。

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