10月1日(日)
こないだ(性格的に)待てない患者さんA氏に「先生もな、適当に手抜いて診察せなあかんで。待ってる方はたまったもんやないわ」と言われ「じゃあAさんから手抜きますね」と笑顔で答えてしまった。
10月2日(月)
昨夜寒かったので、枕動かして、身体を斜めにして、端で丸くなってる木乃にくっついて寝た。目覚まし鳴ったら、全くそのままの形で犬も人も寝てて、ちょっとびっくりした。6時間半身動きしてなかったんかい。
10月3日(火)
ウルフ『「アンネ・フランク」を超えて かくまわれたユダヤの子供達の証言』を読み終わった。ナチ支配下のオランダを匿われて生き抜いたユダヤ人の子供達の戦後の生活を聞き取りしてまとめた本。なのだが、子供達の証言が出てくるまでが長い長い。アンネの事例からオランダはユダヤ人迫害に非協力的な印象があるが、実際はそんなことはなく、ホロコーストを生き延びた親が匿われていた子供を引き取ろうとしてもオランダ国家が「キリスト教徒として育つことが幸せ」と判断して妨害まがいのことをしていたこと、奪われた財産も、奪われたユダヤ人本人が不当に奪われたことを証明しないと返還されなかったこと(ちなみにデンマークは、国家公務員がユダヤ人の家の鍵を管理していた)、戦後孤児の調査をしたソーシャルワーカーさえ「典型的なユダヤ人でずるい」みたいな報告書を出していたこと、などが語られる。
匿われた子供達の多くは、戦後から苦しみがはじまったと述べており(そもそも匿われた時に親から見捨てられたと感じている子供も多いが)それまで匿われていた比較的生活水準の高い家庭から、実親、孤児院、新たな養子先のいずれにせよ、より生活水準の低い環境に移り、虐待を受ける可能性も高まったことが一因のよう。実親がホロコーストを生き延びたとしても、親自身も親類のほとんどと財産を失い、精神的にも身体的にもダメージを受けていることが多く、匿われている間に潜伏先を転々としていたことから、人を容易に信用しない子供が、そんな親と合流しても、なかなか幸せには暮らせない、という、確かに考えれば当たり前の現実が語られる。子供達の証言は作者が恣意的に切り取ってバラバラに纏められており、繰り返しも多いのが残念。
10月4日(水)
カントは最近、木乃がいるケージの中に入ったりしている。前の兎の時は、一方的に犬が追いかけていたが、カントの場合は、一方的に兎が犬を挑発しているという…この差は何なんだ。
玉縁鳩目ボタンホールが5個できた。残り4つ。
10月5日(木)
くそ寒いのにトレンチコートがまだ出来上がらない(ボタンホールはできた)。
最近よく木乃にちょっかい出すカントが、木乃の前でアタマを下げて「撫でろ」と要求したところ、木乃が前足で撫でる事件が発生。「ワンちゃん賢いな」とS君の木乃への評価がダダ上がり。
10月6日(金)
数日前にこむら返り起こしてから、痛くて足引きずってるんだけど、職場がやたら階段が多いので、全然回復しない。
10月7日(土)
週1で草むしりを始めて数回目。PlantNetというアプリで庭の植物の種類を調べるという知恵を身に着けた結果、昔植えたプルーンと姫リンゴの木を再発見。あと、ナツメとアケビが生えてた。
そこら中にエノキとカシワの木があることも判明。特にエノキは物凄く根を張っていて大変。
パレスチナの攻撃えげつないわ。若い女性の遺体裸にしてトラックの荷台に載せて引き回すってさ…。
10月8日(日)
朝から全身痛い。草刈りは毎週してるのにおかしい、と言ったら、S君「(稼働)時間が違うのでは?」そうだった、今までは暑過ぎて半分ぐらい休憩していたが、昨日は全く休憩していない。
午前中に階段と玄関とトイレ風呂掃除。昼はにしんそば+卵ご飯いかなご付きだった。
ウサギの食欲がまた衰えている。動物病院に行くと、プリンペランとガスモチンを処方されているようなので、とりあえずガスモチンだけ飲ませた。プリンペランは私が錐体外路症状を起こすので、危険なので置いてないのよねえ…。
ウサギ、S君が抱っこしたり、薬飲ませようとすると頑強に抵抗するが、私がやると大人しい。S君「さすがムツゴロウ」いや、私はウサギ臭くなるので、抱っこはイヤなんだが…。
10月9日(月)
朝夕抱っこして薬を飲ませ、すり潰したペレットをシリンジで食べさせ、昼はいかなごとタンポポ狩り場(単なる御所だ)まで行ってタンポポを採り(今はタンポポの葉しか食べない)、雨上がりで葉が濡れてるので水気を拭き取り、起きてるところを見計らって、せっせと口の中に草を突っ込み…連休はウサギの介護で過ぎて行った。ちなみに、試験前なのにもぐは風邪で寝込んでる。
ピンカー『暴力の人類史』を読み終わった。長過ぎて読み終わるのに1年ぐらいかかったが、近年読んだ本では最高に興味深い本。全体を貫くのは「世界的に暴力はひたすら減少傾向にある」こと。2011年初版なので、戦争についてはロシアの侵略前だしちょっと何だが「戦争はランダムに勃発する」「民主国家は国家間の武力衝突を起こしにくい」「子供への的確な援助など、援助方法が確立されてきていて、戦争の死者は以前より少なくなってきている」「平和維持軍と平和維持活動は有効」。あと、今のアメリカの保守は、昔のリベラルよりリベラル、というのも面白い。
とにかく昔は残酷で、「病気や怪我で死ぬ人が多いから、神は血を流すことを望んでると考えた」「中世の人々は幼児性と衝動を抑制できず、上層階級も暴力を振るい振るわれていた」「サディストはどんどん慣れていく。昔は残酷さに慣れてる人がたくさんいた(旧約聖書しかり、パンチ&ジュディの酷さしかり)」「アメリカ先住民は、殺した相手の妻を妻にし、子供は奴隷にするのが通常」「狩猟採集民が暴力死を遂げる確率は、文明社会の人間の5倍」「国家組織がないと、騙し討ちが増える。集落ごと皆殺しもよくある話(ただし一回の死者数は少ない)」
ちなみに現代でも、都市より田舎の方が殺人率が高く、殺人発生率が10万人当たり1人ぐらいに下がると文明的な感じ。アメリカ南部では、合法的な暴力が市民の手に握られており、殺人率が高い黒人だけでなく、南部白人の殺人率も高い。とはいえ、アメリカでポグロムや暴動が頻発したのは1940年代までらしい。
最近暴力が減ってきたのは、「みんなが抽象化できるようになり、仮定の話ができるようになった」「教育が普及すると、10代男子が学校に行って、路上にいなくなる」「教育すると賢い人が増え、賢い人が増えると民主主義になりやすい」などが原因として考えられるらしい。清潔さが道徳的感性に影響している、というはよく分かる気がした(不潔だと残虐に扱われやすい)。
未婚男性が増えると殺人率が上がるのは有名だが、「自分を過信して破壊的行動を取るのはほぼ男性」「名誉の文化が過剰発達し、自尊心が分不相応にあるから暴力的になる」「女性が力を持っている国ほど戦争を許容しにくい」。あと「国際的に辱めを与える運動は、いずれ長い目で効果を生む」とも。
誰しも自分の被害は大きめに、相手に対する攻撃は小さめに見積もる。その結果、争いは激化し、法執行がきちんと行われてないと復讐心が強くなるわけだが、内戦後、争いが収まるのに必要なのは「不完全な裁き」。人々が不公平を容認するようになることが重要らしい。「市民規範はインフラの一部」というのは頷ける話。
ジェノサイドについての章もあり、かなり興味深かったが、「ジェノサイドの減少のかなりの部分は共産主義の衰退」という身も蓋もない話が。著者はカナダ生まれのアメリカ人なので、端々にアメリカ万歳味があるし、え?みたいな説もあるが、お勧め。
10月10日(火)
イスラエル・パレスチナを「イ・パ」と書かれると、インド・パキスタンと間違えがち。
明後日のテストのノートがないことがバレ、S君がもぐの部屋に捜索に入ったところ、大量の飲みかけのペットボトルと食べかけのポテチ袋が発見された(そしてノートは見つからず)。
S君「生物が自然発生するかどうかの実験をしているかのようだった」