6月11日(土)

 『隣人は悪魔 −ナチス戦犯裁判の記録−』を見た。トレブリンカで「イヴァン雷帝」と呼ばれ残虐行為を働いていた看守だとして、1986年にイスラエルに引き渡されたアメリカ人男性の事件を追ったドキュメンタリー。全5話のテレビシリーズなため、疑われたジョン・デミャニュークの素性などは明らかにされず、矛盾した情報を少しずつ出していくのが面倒だが面白かった。

 本人は一貫して否定する中、イスラエルでは、トレブリンカの生存者の証言から、デミャニュークは「イヴァン雷帝である」と死刑判決が下されるが、後にソ連の情報公開が進み、出てきたトレブリンカの看守たちの証言記録から別人であると判断され、93年にアメリカに帰される。が、8年後の01年に今度はドイツに移送され、2011年にユダヤ人殺害に関わったとして禁固5年の有罪判決を受けるが、翌年老人施設で91歳で死去。

 ウクライナ人のデミャニュークはロシア軍に入隊し、ドイツ軍の捕虜になり、ドイツ軍に協力してソビボルや他の収容所で看守をしていたらしく、SSがよく入れていた血液型の刺青を入れており、トリブレンカ近くの小さな街のことも知っているし、各種書類から強制収容所の看守をしていたことは間違いなさそう。が、トレブリンカの「イヴァン雷帝」かどうかは生存者の証言のみだし、同時代資料の同僚の証言では「イヴァン雷帝」は死亡したっぽいので違うんだろうな。生粋のサディストっぽい「イヴァン雷帝」だったら、戦後アメリカで何十年も大人しく暮らしてなさそうな気が。

 それにしても、デミャニュークの弁護士となった、自分の名声しか考えてなさそうなシュフテルというイスラエル人がキモかった。

6月12日(日)

いかなご「サトゥルヌスってなんで我が子を食べるの?」
私「お腹空いてたんじゃない(適当)」
 …あ、違った。ゼウスの父親だったわ、この人。

 散歩に行ったら、歩くの嫌いで自転車の前かごに入って散歩する犬と、他犬が怖くていつも飼い主の後ろに隠れてる犬と、遊びたいけど他犬が怖くて、木乃が近づくとワンワン吠える犬と、近所のお婆ちゃんが会合していて、そこに木乃が近づいてお婆ちゃんに遊んでもらって、尻尾降ってはるわ、お利口さんやねえ、とか言われていた。という話をS君にしたら「その種族、滅びるんじゃね」。

6月13日(月)

 診察中に子供に痛い処置をしたら、横のお母さんが「痛いねえ、可哀想だねえ」と慰める、という話をしたら、もぐ「え?それじゃママ悪者じゃん」。気遣っていただいてありがとう。

 『ミュンヘン: 戦火燃ゆる前に』(2021年、イギリス)を見た。 ミュンヘン会談でのチェンバレンを中心に据えた話だが、ヒトラーが似てなさ過ぎて、誰やねんというレベルで酷かった。ムッソリーニとチェンバレンは似てるだけに猶更。あと主人公のイギリス人がハリポタのロンに似てた。チェンバレンが、とても思慮深くいい人に描かれ、ズデ―デン割譲を認めたのも対ドイツ戦争の時間稼ぎのためと強調されていて、ドキュメンタリーで弱腰とdisられてる姿ばかり見慣れていたので新鮮だった。

6月14日(火)

 もぐが朝から短歌詠んでた。「これからは もぐは目覚ましで起きるから ママが叫ばなくて済む理想の世界」

 いかなご、運動会だというので、アメリカナイズな弁当にしてみた。ゆでたまご、ソーセージ1本、人参・セロリ・きゅうりスティック、ブドウとおにぎり。

6月15日(水)

 職場のエレベーターで「何なんですかねえ。雨やんだと思ったら、また降り出して」と愚痴ったら「先生、梅雨ですわ」と突っ込まれた。

 『邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相』を見た。テレビで昔見たことがある、首に爆弾を取り付けられて銀行強盗をさせられた挙句、首の爆弾が爆発して死んだ男に、爆弾を取り付けた犯人の男女の話。男の方は病死したので、女の方がメインになっていたが、とにかく不気味。犯行動機もへったくれもなさそう。

6月16日(木)

 いかなごさん、目鼻口すべてS君そっくりなのに、顔が球形という一点において私にそっくりで、遺伝の不思議について思うこと多し。もぐはまんま私の目鼻なのに、見事に馬面族だし、どうしてこういうことになるんだろ。目鼻口の形が折衷案になっても良さそうなのに。

6月17日(金)

 シュタングネト『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』を読み終わった。図書館で借りたんだけど、次の予約が入っていたので、急いで返しに行った。まず驚いたのは、「上からの命令に従っていただけ」的なアイヒマン像を覆したこの本、邦訳が出たのが昨年、原作は初版2011年だったこと。

 ハンナ・アーレントは裁判調書はすべて読んで『悪の陳腐さ』を書いたが、エルサレム裁判でのアイヒマンは仮面をかぶっており、アルゼンチンでのアイヒマンの暮らしぶりや発言を知らなかったアーレントは罠に嵌ったこと、周りを操りたいという欲望を持っており、文書を書くのが大好きなアイヒマンは(裁判中、8000ページ書いたらしい)自分を理解したいと思う人間の願望を利用したこと、逃亡した父アイヒマンを追って、アルゼンチンに渡ったアイヒマンの子供達は、ドイツ大使館で普通に本名でパスポートを更新していたこと、アイヒマンの息子と恋仲になった娘の父親が、アイヒマンに気付いたことによりイスラエルが拉致した、かどうかは分からないこと(情報源は他にもあり、ソビボル脱走者のシュマジネルが通報者という説もあるらしい)、そして2000年になってようやく内容が明らかになってきた、知人サッセンによるアイヒマンインタビューで、アイヒマンの考えが色々と判明したこと。

 出世主義者のアイヒマンは、ハイドリヒと親しかったことを誇っており、「ユダヤ人殺害は、自然が要求する闘争に従って行ったもので、道徳的に正当」「悪いのはユダヤ人であり、多数の戦死者を出したドイツは被害者」と考え、シオンの議定書が偽書であることは理解しており、「死の行進」を「ユダヤ人トレッキング」と呼んでいた。

 人の話に割り込んで自説を主張することもあるアイヒマンは、国民社会主義者で反ユダヤ的ではあるが、殺人は良くないと考えているサッセンが、殺害されたユダヤ人数を少なめに見積もろうとしたところ、「もっとやるべきだった、努力不足ですまん」的なことを言って、その場の雰囲気をぶち壊したこともあった。

 ホロコーストについては、当たり前だが直後は色々と分かっていないことが多く、アイヒマンはユダヤ人死者数は30万人などと言っていたが、1955年に出た本『第三帝国とユダヤ人』によって、言い逃れが難しくなってきたらしい。東ドイツがソ連の資料を用いて、西ドイツが過去と決別していないことを非難したために、明らかになったこともあるとか。改めてフリッツ・バウアーがどれほど偉かったのか分かった気がする。

 一方で、2010年になっても、ドイツでは過去の文書を公開するかどうかで裁判になっており、著者は、不名誉な過去を美化したり、正当化したいと思っても、子孫が苦労しなくて済むようにするために、できることがあるのではないかと、日本の読者にも語りかけている。

6月18日(土)

 自分一人のために昼食作るとか超絶やる気出ないけど、冷凍庫の空間を開けるために!と思うと俄然やる気が出てきて、冷凍ご飯にナゾの冷凍オクラと冷凍アスパラと萎びたセロリと白菜を放り込んだ雑炊作った。

いかなご「ママには初恋の人はいる?」(最近、先輩に恋している後輩から相談を受けているらしい)
私「初恋の人?…初恋の犬ならいるけど?」
いかなご「いや人間にして」
 という話をしたことを同級生に話したいかなご、「お母さんも変な人なの?」と言われたらしい。

 『平和の木々』(2021年、アメリカ)を見た。ルワンダ虐殺の最中、たまたま一緒に狭い地下空間に隠れることになった4人の女性の過去が明かされていく、という割とありがちな映画。

6月19日(日)

 ここ数ヶ月ずっと五十肩なのが常態だが、ドア開けるだけで痛いってのはさすがに不便過ぎる。

 自分一人のための昼食二日目。自力サラダバーにした。冷蔵庫の野菜を切りまくって、だし用削り節と缶詰コーンを投入してドレッシングかけた。

 『ジャドヴィル包囲戦 -6日間の戦い-』(2016年、アイルランド、南アフリカ)を見た。1961年にコンゴに派遣された国連平和維持軍(中身はアイルランド軍)数十人が、千人以上の反政府軍&傭兵部隊に襲われたが、一人の死者も出さずに弾薬が尽きるまで戦い抜いた、という話だが、ほんとに映画のように砲撃されていたら、さすがに死者ゼロは難しい気が。あと、ハマーショルドって、この時の国連事務総長なんだ。

6月20日(月)

 散歩が暑いと思ったら30℃あった…。

 狛犬柄の着物買ってきて「可愛い〜シーズー柄だよ〜!」と喜んでたら、
いかなご「どう見ても狛犬」
S君「それがたとえシーズーだとしても、全く嬉しくない」

 慶事が嬉しくて、なかなか眠れなかった。



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