2月1日(月)

 生まれてからずっとガリガリで骨が浮き出ていたもぐが、最近太ってきた。上腕や大腿に少し肉がついてる。おやつたくさん食べるし(これは生まれてからずっとそう)、未熟児なのでデブになりやすそうだし、というかS君肥満児だったし…この先がちと不安。ちなみに、いかなごは最近は太らず痩せずで、安定してきた感じ。

 ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』を読み終わった。1987年に再発見された、150年以上前の奴隷の女性が、北部で自由に暮らせるようになるまでを綴った自叙伝。優しい主人の下で自由黒人のように育った主人公は、主人が死んだため遺産としてまだ子供の姪に贈与され、その姪の父親の好色な白人男に迫られるようになり、それを断るために別の白人男との間に子供を産む。しかし状況は改善されず、逃亡すると見せかけて、最初は近所の親切な白人女性の家に、その後は開放奴隷の祖母の家の屋根裏に7年も隠れ、機会を見て北部の自由州に逃亡。2人産んだ子供は主人に所有権があるため、父親の白人男に頼んで買ってもらい、自由州に行かせる(しかし父親は、そのうち白人女と結婚し、黒人の自分の子供は無視)。ところが自由州で逃亡奴隷法が成立し、捕まると南部に戻されてしまうようになったため、逃げ回るはめに。主人公は、親切な白人の雇い主が、探しに来た主人夫婦から買い取る形でやっと自由になる。奴隷制というのが、いかにとんでもない制度であるかが本当によく分かる体験談。これは抄訳らしいので、全訳版も読みたいところ。

 黒人奴隷は正月になると、売られるか売られないか、どこに配属されるかが決まるので、おちおちクリスマスも楽しめないというのが、どこかで聞いた話。もちろん、子供もバラバラに売られてしまうので、うちらとは話の次元が違うが。産んだ子供を全員売られてしまうなんて、マジで生きていけないわ。自由黒人と黒人奴隷の夫婦がいたり、白人男はたいがい黒人奴隷と白人の妻の両方との間に子供を作るため、黒人奴隷と白人の異母兄弟がたくさんいるとか、黒人奴隷とは言っても、混血し過ぎて見た目では分からない人もいたり、さらに自由を売ったり買ったりできるというのもややこしい。当時のアメリカ人、よくこんな世界で生きてたな。

2月2日(火)

 見たことも筋も知らないのに『地獄のズバット』だけは歌えるのは、正にサークルでの教育の賜物だわ。サークル大事。

 もぐに「今日がママの誕生日なんだよ」と言うと「え!…ハッピバースデー♪」と満面の笑顔で歌い出した。うんうん、この切り替えの速さは生きる上で有利だ。

 そして子2人に「ママ何歳になったの?」「大丈夫だよ、すぐにパパも後を追うから」「で、何歳になったの?」と追い詰められて、不機嫌になる(笑)。

 夕食は皮から手作り餃子だったが、なんと今回はほとんどいかなごが包んだ模様。そろそろ色々と役に立つな。で、いかなごからの誕生日プレゼントは「もぐをいじめない券(30分)」×12枚だった。実効性があるのか疑問だが、大事に使おう。なぜかS君からのプレゼントはミニバラの鉢植え。なぜバラ。

2月3日(水)

 木乃の散歩中、もぐが頭から私の足にぶつかってきて、倒れて両大腿を打撲。いかなご「もぐ、ママはご老体なんだから、ぶつかっちゃダメでしょ!」私「ご老体じゃなくても、相手が室伏じゃない限り、ぶつかっちゃダメです」

 もぐは「いかなごにこれを被せて、豆をぶつけて、日頃の恨みを晴らす」と保育園で作ったお面を大事そうに持って帰って来た。が、S君といかなごが作った恵方巻きを食べる行事に忙しくて、豆を投げたのは寝る時間を過ぎてから。恵方巻き侵食し過ぎ。

 木乃がやたら膝の上に乗ってきては、お座りして私の顔見て、もの言いたげだったが、何か用でもあるんだろうか。1週間に1回ぐらい、こういう日がある。

2月4日(木)

 久しぶりに前の病院に縁のある人々と会った。こないだ送った人が、すぐに行くように何度も言ったのに、着いたのが4時間後だと知って平謝りしたり、訴訟が向こう側の事実上負けになったと知ってほっとしたり。

 あと、高校は遊ぶところで、勉強は塾でするものだというのは、同志社の人の共通認識なのか(謎)。

 押川剛『「子供を殺してください」という親たち』を読み終わった。精神障害者移送サービスを行っている著者が実情を語ったものだが、第一章のケースドキュメントがもう、そうそう、こういう人いるいる、という感想しかないあたり…。ひきこもりや家庭内暴力を起こす人々は、親にも問題がある場合が多く(タイトルのように「子供を殺してください」と平然と言ったりする)「問題行動を繰り返す子供の親は同じ問題行動がある」「親の見通しが甘く(「入院させれば直る」と思っていたり)人の話を聞かない」そうそう、そうなんだよね。幼少時から問題がある人が多いことから、たぶん発達障害や低い知能が基礎にあり、家族の遺伝的背景や二次障害も関係してるんだろうな。難しい状況の人ほど福祉から漏れやすい現状から、著者は警察OBを取り込んで横の連携を強化したスペシャリスト集団を作ろうとしているらしい。凄い。

 それにしても「対応困難な患者がそうなった要因には、親子関係が大きな比重を占めている」いや全く。経験上、重症の成人アトピー性皮膚炎患者は、お母さんが横についていることが多い。

2月5日(金)

 隣んちの猫に手を振ったら、口パクパクされて、尻尾を振られた。こういう時、猫語が分からないのは不便。

 柳内伸作『残虐の民族史』を読み終わった。S君に渡されて、だから私残虐は好きじゃないんだって、読みたいのは虐殺だってば、と思いながら、気持ち悪いので少しずつ読んだら、世界の色々な時代の色々な人々の残虐行為が俗悪に網羅されていて、定番の中国や魔女狩りだけでなく、ジャワ島やフィリピンの昔の話まで書いてあって、著者は博識だなあと思った。それにしてもスペイン人やイギリス人の原住民虐殺は凄まじい。

2月6日(土)

 今日初めてgoogle mapを使って、行ったことのない店まで歩いて辿り着いて感動!自分の歩いてる位置がGPSされるなんて!スパイだ!それでも迷ったけど!

 で、医局の同期周辺の女子会終了。面子が謎だったが、幹事が声をかけやすい範囲、という基準だったらしい。集まった8人が椅子に座るやいなや話しはじめ、お店の人が料理の説明に口を挟む隙さえなかなか見つからず、3時間喋りっぱなし、という凄い会だった。話題:働きやすさはトップ(院長)次第。人事はまだ決まってない、今年遅過ぎ、たぶん人手がいない。田舎はペイが良い。男どもは変わっている(ことが多い)。出産は命懸け(最近同期で出産時に亡くなった子がいたり、出産後に自分が長期入院も2人。というか、8人中7人に子がいて、そのうち5人が切迫経験者って何、この切迫率の高さ)。みんな非常勤になりたいが、そう簡単にはなれない。七十近い元教授まで働いてるので頑張ろう。

 いかなご、4年生の塾授業開始。午後一杯あるので、おやつを持って行かせようと思ったが、好みの偏ってるいかなごの気に入るものがなく、結局ペットボトルの水と堅パンに。童話の継子(あるいは末っ子)かよ。1日に3教科入れたら、持ち帰る教科書が恐ろしい量になり、自力でリュックに収納できずに、袋に入れて下げて帰って来た。

2月7日(日)

 S君が二階の西側の部屋から真ん中の部屋にダブルベッドを移すという大事業を完了。

 こないだ買った木乃ハウス、最初に一回入った以外はずっと上に載っていて、まあそれでもいいかと使わせていたのだが、ウサギに汚されたので、古いのを出してきたら、木乃喜ぶ喜ぶ。やっぱりスッポリ型より半球型がいいらしい。

 フィギュアスケー卜あにまるず、横で見てる子供らはイワシ消すゲームだと思ってる。試合が終わると、いかなご「もぐ、イワシ来たぞ!」

 後輩のもぐと同級生の男の子はパパっ子らしく、ママには寄り付きもしないらしい。何をどうやったらパパっ子になるのか、寄り付きもしなくなるのか、真剣に知りたい。S君は「その子が恐いんじゃないか」というのだが、患者さんには私よりやさしい子なんだが…。

 ガチ君の「羽生は手足が伸びてなくて、氷上で絵を描いていない」という評は、非常に納得できるわ。あと、ロシア人以外は滑ってるのに、ロシア人は歩いている、というのも。

2月8日(月)

 いかなご「もぐ、大人は仕事して稼いでるから、特権がいくつかあるんだ。夜、暗い中で自分だけ電気つけて本読むとか」(超羨まし気)。ええ、ええ、いいだろう。でも最近は、そんな暇あるなら撫でろ、じゃないと噛む、という犬が来るので、おちおち本も読めないけどな。

 もぐといかなごが風呂に入る時に、初めて誕生日プレゼントの「もぐをいじめない券」を使ったが、いつもは聞こえてくる怒号が聞こえなかったので、凄い効果だと感動。

 シュロモ・ヴェネツィア『私はガス室の「特殊任務」をしていた』を読み終わった。扇情的なタイトルで敬遠していたが、普通の体験談。主人公はスペインからイタリアを経由してギリシャに移住したユダヤ人の子孫で、イタリア国籍を持っていたため、アウシュビッツに収容されたのが比較的遅く、今注目のゾンダーコマンドの一員となり、別グループに紛れてアウシュビッツから撤退し、生き残る。ガス室で死ぬのには10数分かかり、空気を求めて上に行こうとするので、死体同士が絡まっているなんてのがもう。生き残るためには人のことなんか構っていられなかったとか、1992年から証言を始めたが、それまでは誰も聞いてくれなかった、というのも典型的。

2月9日(火)

 いやあ、銀行って本当に上から目線なのね。

 ヴァーリィ『汝、コンピューターの夢』を(お風呂で)読み終わった。全編エイトワールドなせいか、すっきりしていて読みやすい。見直してみたら、『残像』は「逆行の夏」の前に「空襲」が入ってるのね。そりゃ印象も違うはずだわ。最初に読んだのがハタチ前だったせいか、今の方が分かりやすく読めている気がする。二巻が楽しみ。

2月10日(水)

 レミゼの10周年記念コンサートを聞いたら、最後に17か国のレミゼ公演の歌い手が出てきて、各国語引き継ぎでDo you hear the people singを歌ってて凄かった。

 大島幹雄『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』を読み終わった。サーカス研究をしているサーカスプロモーターの著者が、ロシアの研究者から見せられた写真を頼りに、写っていた日本人らしき人々の消息を探してまとめたもの。話があっちこっちに飛ぶので追い辛いのが最大の難点だが、そこそこ面白かった。少し驚いたのが、サーカスの芸人が孤児のような子を幼いうちに引き取って、養女養子にして育てることが本当に多かったことと、とんでもなく難易度の高そうな芸をしていたこと。あと、ロシアで「ハラキリショー」という子供を切り刻むようにみせるスプラッタな出しものが大人気だった、というのが凄かった。



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