8月21日(金)

 高槻と寝屋川って接してるんだ。犯人と同じ名前の人たくさんいそうだなあ…私の同級生にもいたわ…。

 吉川浩満『理不尽な進化』を読み終わった。進化学の専門家ではない博識な著者が「自分の納得のために地面を掘り返し埋め戻す過程を書いた」本。語り口は面白いが、博識過ぎて私にはよく分からないところもあり、埋め戻しているので、かなり冗長な感じがした。1、2、3章はともかく、最終章の、グールドは何をしたかったのか、なぜ根っからの科学者であるグールドが、適応主義にあれほど反抗したのか、は面白かった。その理由、進化論は歴史を内包しており、歴史は理不尽さに対する形而上学的態度だから、というのが何となく分かった気がする。

 確かに理不尽というのは、実に気になるものだ。大学受験の時に、連続6校の試験に落ちた友人と、志望校はもちろん行く気のない一流私立大学にまで受かった友人を見た時にも考えたし、研修医の時に23時過ぎに裏口から帰ろうとしたら、出入り口のそばのベンチに、余命数年の消化器癌のおじさんと、骨髄移植待ちの白血病のおばさんと、難病の18歳の男の子がいて、揃って「先生、バイバイ」と手を振られた時にも考えた。

8月22日(土)

 女子砲丸投げの人が凄く強そう。

 昼から同志社の子供向けイベントに。一般的な子供向けイベントと違い、子供扱いに慣れていないサークルの学生さんが、頑張って相手をしてくれている感じ。無料なのに有難いことです。いかなごは子供向けのゲームプログラミングや、雅楽楽器体験、カードゲームなど、とても楽しかったらしい。面白かったのが、怪物を倒してくれ、と説明され、うまい棒を2本渡されて、仕切りの奥に誘導されると、そこにプロレスのマスクをかぶったお兄さんがいて、うまい棒でブチのめして倒す、というイベント。もぐはうまい棒を渡されるところで、既にびびりまくって脱走しかけており、「ほら、お姉ちゃんが今倒したから弱ってるから!」と説明されて、必死に攻撃すると、お兄さんは実に適切に倒れてくれた(笑)。

 途中で親だけ抜け出して、横の学食兼カフェ的なところで、パンみたいなものがたくさん入っているパフェを食べたりも。ジャグリング兼手品の公演も見たが、私の見た回はすべての出演者が失敗していて、ジャグリングって難しいんだなあ、と(S君が見た回は上手い人もいたらしい)。最後に、もぐ垂涎の同志社戦隊タナレンジャーの公演。結構きちんとした筋立てで、終わった後は写真撮影会まであって大満足。運動量が多い上にやたらフレンドリーな戦闘員の皆様が素敵だった。

8月23日(日)

 朝から地蔵盆。一家で家を出たり入ったりするので、その度にケージに入れられる木乃が迷惑気だった。今年はやたら子供の数が増えていて、紙芝居も流しそうめんもスイカ割りも大盛況。食べるだけ食べると、流れた素麺の回収や水を排水溝に捨てたり、と労働に従事する子供達(笑)。もぐがスイカ割りするのに、目隠しをずらしてズルしたり、挙句の果てに見物人に木刀当てたり、いかなごが地蔵盆で配られる近所のスーパーで使える券で勝手に千円分のお菓子を買いに行ったり(親に言ったら好きに買わせてもらえないから、こっそり行ったらしい。そりゃ今まではお菓子じゃなくて、普通の買い物に使ってたからな)と今年も子供らは満喫した模様。あまりに人数が多いので、今年は数珠回しは私だけ遠慮した。

 最近コミが犬ケージの横をくつろぎの定位置に定めたようで、夜になるとグッタリした犬と油断しきったウサギが、20cmぐらいの距離で鼻先付き合わせている…お前ら慣れ過ぎ。

8月24日(月)

 岡部いさくの水玉螢之丞対談を見た。子供の育て方や環境が、如何に恐ろしく大事なものであるかがひしひしと。

 ヘラー『いつかぼくが帰る場所』を読み終わった。とりあえず犬が死ぬ。話の筋上仕方がないのだが、セスナにも乗る可愛い主人公の飼い犬が死ぬ。アメリカ的ポストアポカリプティックものの常として、生き残りは小人数に分かれて、銃で襲い襲われ、女はレイプされ、人肉を食べる。主人公は人をなかなか殺すことができないヘタレ。犬が死んだ後、嫌なヤツだと思っていた隣人の武器オタクの老人が家族同様の存在と分かり、最終的にはその老人、同じく武器オタクの彼女の父親と昔話しながらチェスしてるという…。セスナが良い味を出しながら、明るい未来を感じさせつつ終わる、かなり素敵な絶滅物。犬さえ死ななければ、再読できるのにっ…。

 でまたこの犬が可愛いんだ。

8月25日(火)

 「シーズーの真実」的な動画を見たら、シーズーは共産主義政権により1930年代に絶滅しかけ、今いるシーズーの祖先はわずか14匹なんだって。

 夜、出てきたがらくた箱の整理をしていたら、たあの写真の入った写真立てが出てきた。それがまた見事に木乃とそっくりで、単なる色違いにしか見えない(たあは白黒、木乃は白茶)。いや、別に祖先が14匹だからといって、シーズーがみんな同じ顔をしている訳ではない。私しゃ結構色々なシーズーの写真を見ているが、ここまでたあに似ているのは木乃だけ。

8月26日(水)

 10年ぶりぐらいに会う2年前に開業した同期の子を含む4人で飲み会。やっぱり下部は受けた方がいいとか、父親が愛人と別れてやっと平和になったとか、犬が嫌いだったのに今は3匹飼って溺愛してる話とか。

8月27日(木)

 高野秀行『ビルマ・アヘン王国潜入記』を読み終わった。著者がビルマの国境地帯の、少数民族の軍隊が支配している村に住み込んで、米の裏作のアヘン栽培を実際に行う話。電気もテレビも水もなく、世界の情報は全く入らない村で、毎日青菜入りのご飯だけを食べ、服にシラミがたかり、最終的には阿片中毒に。阿片を吸うには技術がいるため、村で阿片吸いの人を探して吸わせてもらうとか、村は適当な助け合いの原始共産制で、喧嘩をしても翌日には仲良くなるシステムになっているとか、何番目に生まれたかが名前に明示されているとか、はっきりした宗教はないとか、アフリカやインドのように図々しい人はおらずみんな控えめで勤勉とか、隔絶された村の様子がとても面白かった。阿片中毒の様子も興味深い。モルヒネってまだ簡単に合成できないのね。

8月28日(金)

 昨日からムカムカする。

 ハッツフェルド『隣人が殺人者に変わる時 和解への道』を読み終わった。後日譚となる3作目は、西京高校の先生が一人で訳してるんだ。お上に従う国民性のルワンダでは、和解策を取る政府の下で、表向きは争いは起きていないが、もちろん虐殺の生き残りは色々問題を抱えて生活しており、フツ族と和解する気はさらさらない。生き残りの一人が言う、虐殺の原因は結局貪欲さだというのが、さもありなん。

 相変わらず生き残りのツチ族が一方的に被害を被ったままなのだが、多数派のフツ族がいないと農業をする人がいないのも確かで、この政策もやむを得ないのは分かる。この本は1つの村の状況を取材しているので、地域が違うとたぶん情勢も違うのだろうが、この先どうなるのか。前作でインタビューに答えた加害者の1人が、7年服役した後釈放されて、ツチ族の生き残りと結婚。実は虐殺の時に幼馴染で仲の良かった彼女を沼地で見つけて、こっそり匿っていたのだろうという話だけが少し明るい(しかし加害者の家族は反対しまくり)。

8月29日(土)

 滋賀の家に行って、S君が草刈りしたり、もぐが秘密基地作ったりした以外は特に何も起こらず。引き続きムカムカ。

 ペーボ『ネアンデルタール人は私たちと交配した』を読み終わった。久しぶりに最初から最後まで実に面白かった本。著者はスウェーデン人の科学者で、エジプトのミイラからDNAを抽出しようと思ったのがきっかけで、古代の動物のDNA配列を決定、ついにはネアンデルタール人のDNA配列を決定し、その結果現代人とネアンデルタール人は交雑していたことが判明、という話なのだが、科学的な部分まで細かく、しかし細か過ぎずに書いてあるので非常に分かりやすい。

 そもそも細胞が保存されていたとしても、DNAって数万年単位だと結構分解しているものなのね。PCRが発見された頃から研究を行っていた著者は、マックス・プランク研究所に所属して「潤沢な資金を提供された」と折に触れ明記してあり、自分がバイセクシャルであり、引き抜いた研究者の妻と不倫して、その研究者と話をつけて円満に別れさせて彼女と子供を作ったとか、自分はプロスタグランディンを見つけたノーベル賞受賞者の婚外子なんてことまで書いてある。

 白眉だと思ったのは、ネアンデルタール人の骨を手に入れたものの、読めるDNAが足りず、嫌がるグループに放射線同位元素を使うことを認めさせて、DNAの回収効率が低いことを明らかにし、試薬を替えさせて回収効率を上げたことと、回収したDNAの中でネアンデルタールのDNAはわずか3、4%なため(ほとんどはバクテリアのもの)シークエンサーで読み取るのに非常に時間がかかっていたので、制限酵素でバクテリアDNAだけをぶった切って、効率を高めたところ。それ以外にも骨の入手や共同研究の選び方など、数多くの苦難を乗り越えた著者は、さらにデニソワ人が現代人と交雑していたことも突き止める。年々技術が進歩している分野でもあり、著者が模索している「人間が人間になった理由」に是非肉薄して欲しい。

8月30日(日)

 TLのおかげで朝起きたら、ジュニアGPの結果と誰がブエルタで骨折したかと星雲賞の詳細を知ることができた。ありがとう。

 二階の寝室の整理を地味に続行。

 ガーナー『政治的に正しいおとぎ話』を読み終わった。流行った時期に流し読みしたことはあると思うのだが、今から読み返しても面白い。『白雪姫と七人の小柄な人たち』で「垂直方向にチャレンジされている男たち」が「原始の男のアイデンティティにふれる必要のある男性たちのための研修会」で生計を立てており、性機能に問題を抱えていたため研修会を受講しに来た王子が、白雪姫を見てレイプしようとするあたりが出色。

8月31日(月)

 リエージュの劇場ロゴと似ているという時点でパクリだとは思わなかったけど、トートバッグで、ああ、そういうことする人なんだ、と思い、原案と展覧会の宣伝を見てこりゃダメだわパクリだわ、と思っていたら…展開例だの他のポスターだの…。マテメソはコピペしちゃダメだし、内輪向けでもコピーライトは消しちゃダメでしょ。

 いかなごの通う小学校の生徒の親は奇妙な人が多いっぽい。場所柄だな…。

 今夜もベッドの中でこっそり本を読むいかなごの試みを粉砕。

 フォン・シュターデン『谷間の強制収容所』を読み終わった。金持ちではないが、ドイツ貴族の一員である主人公が、思春期の頃に、家の近くの谷に強制収容所ができて、戦争に反対しているごく普通のドイツ人の主人公の母が、収容所の囚人を自分の農場に働きにこさせたり、所長と交渉したりして、なるべく囚人を助けるべく努力した、という話。主人公の恋愛話などもあり冗長だが、ドイツでは79年に出版された時に大ベストセラーになったとのことだし、当時のドイツの田舎の雰囲気を表している話ではあるんだろうな。



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