8月1日(水)

 なぜ幼児というものはこれほど箱が好きなのか。朝私が仕事に行った後、いかなごともぐが二人して一つのダンボール箱にみっしり入って喜んでいたらしい。

 他科へ旅立っていった某3年目氏だが、まだ2週間も経たないのに、私も後輩達も色々な先生からどんな子なのかと聞かれまくり。あの科はあんなのに4ヶ月弱も我慢してたなんて…と驚愕の声が上がっているらしい(頭痛)。

 ザトウクジラすげえな(見かけが)。

8月2日(木)

 朝、庭でセミが泣き出した。不審気に庭を見るもぐ「わに さん?」。…何でもワニにするのは止めろ…。

 ピアノの練習をしてると、てんぱったいかなごがそこら中痒がる→それを抑えるために氷を食べさせる→面倒くさいので、コップに氷用意しといて、1曲の片手弾き終わるたびに氷食べさせる→激しくイルカ調教師な気分。

8月3日(金)

 他科の先生に、「(後輩達とは)全然違いますね。全く心配ない」と縫合を褒められ、そもそも褒められるという経験が最近あまりないので(いかなごから、ママ可愛いよとか言われたりはするが)非常に動揺した。

 吉村昭『プリズンの満月』を読み終わった。今いちまとまりのない印象の小説だった。巣鴨プリズンの管理が日本側に委託されてから、管理側によってなし崩しに戦犯が事実上釈放されていったのね。

8月4日(土)

 最近眠くて眠くて(←明らかに暑くて朝紅茶飲んでないのが原因)。

 アゴタ・クリストフ『二人の証拠』を読み終わった。最大の衝撃は、双子なのかどうなのか、ということではなく、『悪童日記』では本人的に倫理的に悪いと思われることは何一つしていないリュカが、利己的な理由でヤスミーヌを葬りさった(たぶん)ことだと思うのだが。

 夜は当直。

8月5日(日)

 1時ぐらいまでずっと救急外来に缶詰。救急車多過ぎて何台来たか覚えてない。夜中もずっと呼ばれ続けて、久しぶりに完徹。これでも収益が悪いと院長に言われるかと思うと腹が立つ。

 完徹だと帰りのバイクが危なかった。

 家にいてもたぶん熟睡はさせてもらえず、不機嫌に1日過ごすだけだと思ったので(夜は8時過ぎには寝たが、予想通り色々と起こされたので、判断は正しかった様子)、一家で屋内遊園地へ。涼しいし夏はここに限るな。もぐは一人で遊ぶようになり、入口通った途端、二人とも駆け出して行方不明に。ちなみにその後、もぐが初迷子。「赤と白のストライプのランニングシャツに、カーキ色のズボンをお召しの2歳ぐらいの男の子を…」とか放送され、引き取りに行ったが、本人的には迷子になった認識はなかった模様。いかなごは子供用スクーターを運転できるようになっていた。いや6歳なんだから当たり前なのだが、運動能力皆無のいかなごでも、ある程度の年齢になればできるようになるのかと思うと感慨深い。

 「もぐ君大好き」と言ったら「大大大好きでしょ」ともぐに訂正された。

 未明の当直の合間に、恐ろしいことに気づいて凍りついた。よく考えたら、それほど恐ろしくもない事態だったので、少し安心したが、自分のわきの甘さに呆れ果てた。ここ数年、のほほんと家族愛に浸っているから、危機感が失われ過ぎてるんだな(自戒)。

8月6日(月)

 最近もぐが「ええーーー」と日本人の基本、エーingを習得したので面白くて仕方がない。「ゼリーこれで終わりよ」「えーー」「ノンタン終わりよ」「えーー」などと、今まで「ママめっ」と言っていたところを「えーー」と言うようになったので、妥協してる感じがしてなかなかよろしい。

 重症が来ててんやわんや。死亡率高い疾患なので、各科の医者が続々と集まって来て、10人以上に囲まれてベッドサイドでオペとか。

8月7日(火)

 いかなご「昨日親友のKちゃんと泥団子作って、それを最後に集めて固めて隠しといたのを守らなきゃいけないから、今日は早く保育園に行かないといけないの。だからママと行く」。あんたも色々大変そうやね。

 湯沢雍彦『大正期の家族問題―自由と抑圧に生きた人びと』を読み終わった。原敬が国民を鼓舞しようと、先進6ヶ国の中で何か日本が一番なものを探しなさい、と命じたら、一位なのは私生児の数と離婚率だけだった、というのが面白い。あと、次男以下は結婚できないか都会に出て行く田舎以外では、意外に三世代同居が少ない(年寄りが早く死ぬから)とか、民主主義の機運が非常に高まっていたとか。

 長野の山奥の村で、1家族30人ぐらいなんだけど、男で妻がいるのは当主だけで、あとは当主の親族と、女性親族の子供だけで一家が成り立っている(結婚にはお金がいるので、当主以外は結婚せず、事実婚で生まれた子供は女性側で育てられる)というシステムも興味深い。

 陸上見てると「黒色人種には勝てません」という言葉しか思いつかない。

8月8日(水)

 涼しかったので良く寝た。しかし仕事は忙し過ぎ。最多入院数更新中&重症は最悪化。

 カロリーナの彼氏、エポやったのね…。

 もぐに「もうママこれよっ!」と頭の上に2本指を立てたら、超嬉しそうに「かたつむりー」と言われた…。

8月9日(木)

 なぜレスリングのユニフォームは虎なのか。

 いかなごが血小板を知っていて驚愕した。年長児恐るべし。

 今はどこの公立図書館もそうなのかもしれないが、一つ一つは小さくて蔵書が揃っていなくても、京都市のどこかにあれば、予約すれば取り寄せてくれる京都市立図書館達が偉すぎる。しかし、こないだ予約の多い本100位までが図書館の壁に貼り出されていたが(廻らないので、持っていれば寄付してね、というお願い)、その100位までをすべて読んだことも、読もうと思ったこともなかったのには笑った。

 『インマイハンズ―ユダヤ人を救ったポーランドの少女』を読み終わった。ナチ高官のメイドになった若い女性が、豊富な物資を利用してユダヤ人を高官の家の地下室にかくまった、というのがメインなのだが、それよりいきなりドイツとソ連が攻め込んできて、母国ポーランドはすっかりなくなり、ソ連支配地域でも、ナチ支配地域でも酷い目に合わされてレジスタンスに入り(ついでにユダヤ人も救い)、戦後もソ連の影響は続くし、虐殺を目撃したトラウマもあるしでアメリカに脱出、という人生が何とも大変。

8月10日(金)

 ひとんちの領土に勝手に大統領が来るんだから、外交関係ぶったぎってもいいんでわ。

 宮尾登美子『菊亭八百善の人びと』を読み終わった。江戸時代から続く超高級料亭八百善が、戦後にまた店を再開するぞ、という話なのだが、8代目の次男の店主、主人公のその妻、舅の8代目、その妻、古くからの雇い人達、出てくる全員が、覚悟ややる気や能力や努力がなく、最後は赤字まみれで店閉めて終わるという、何のカタルシスも味わえない小説だった。



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