1月14日(金)

 昨日死にそうだった患者さんは、今日の午前中にすてらはりました。深夜帯の看護婦さんが「気合を入れて」いたために、朝まではもったらしい。「すてる」というのは、「すてるべん」という「死」を意味する単語を動詞化して使っているもので、医者や看護婦はよく使うのだが、それが京都弁になって「すてらはる」となると最早何がなんだか。でも丁寧に聞こえるので、わりとよく使われる。
 午後からはまたしても中心静脈カテーテルの挿入、及び腹水穿刺。

 今日の最大の出来事はこれ。
 仕事をだいたい終え、私は「関西ウォーカー」のテレビ欄を見ていた。
(私)「明日『リング2』があるよ。見たいけど、恐い映画やから夜トイレ行けへんようになると困るし見れへんな」
(同僚)「へえ、『リング2』ってそんなに怖い映画なん?俺がトイレに行けへん程恐かった映画はな」
 そこで同僚は一旦黙り、意味ありげな微笑みを浮かべた(ように見えた)。

あのな、トリフィドって知ってる?

 驚愕のあまり、言葉が出てこない。ど、どうしてトリフィドをお前が知っている!?
「流星が降ってきてな、人間はみんな目が見えへんようになんねん。そこをな、トリフィドっていう植物のおばけみたいのに襲われるねん。中学生くらいの時、たぶんテレビでやってた映画でな、それ見た晩はトイレに行くと、家の中の観葉植物や、外の木々のざわめきがみんな俺を狙ってるようで、恐くて……。子供の時に読んだ『なぜなに図鑑』みたいなやつにも、恐いものとして載ってたで。トリフィドとかへび女とか」
 へび女と一緒にしないでくれ。しかし、どこでどういう質問を不意打ちで喰らうかわかったものではない。注意しなければ。

 同僚には、私がトリフィドを知っているのは、中学時代に『怪奇植物トリフィドの侵略』を読んだからであること、『トリフィド時代』という原作もあるので、是非読むべきであること、などを教えた。
 来週からは彼をウインダム好きにするべく(無理だと思うけど)頑張ろう。

1月15日(土)

 『リング2』はやっぱり恐かった。最初の30分はちゃんと見ていたが、後はリモコンを握り締め、恐そうな雰囲気になると即座にチャンネルを変えながら見ていた。だからストーリーはよくわからなかったけど、まあストーリーはどうでもいいんでしょ、たぶん。
 念願のたれぱんだパジャマを2着買った。寝間着は柄よりも着心地が重要だから、いつも買う時は賭けのようにどきどきする。幸い着心地はなかなか良かった。これで暖かく冬が過ごせる。

 細井さんとこのSF系日記更新時刻に載せてもらっているが、「おとといは兎を見たわ、昨日は鹿、今日は……」と長いので恥ずかしい。しかも、運悪くちょうどマガジンの2月号に『たんぽぽ娘』が再録されたところなので、記憶が呼び覚まされている人も多いだろうと思うとそれも恥ずかしい。なんかこうぶりっ子(死語)のようではないか。確かに『たんぽぽ娘』は好きです、はい、すみません。でも私は『たったひとつ』排撃派だもん。←だからどうした。

 ジョー・ホールドマン『終わりなき平和』をやっと読了。面白くない。『終りなき戦い』はすごく面白かった記憶があるのだが、あれも嘘の記憶なのだろうか。
 「人間化」の計画自体が適当で最後まで描ききってないし、計画が成功したらどうだという未来像がはっきりしない。「人間化」する原理は、なんか偶然そうなっちゃったんだ、というだけだし、後半は狂信者集団とのドンパチばかり。何がどうなるかわかんないけど、今よりはいいに違いない、という確信で世界を変えるというスタンスは好きだけど、それ以外の部分がつまらな過ぎる。「世界SF情報」で見たときから期待してたのにい。

1月16日(日)

 岡嶋二人『記録された殺人』を読み終わり。つまんなかった。岡嶋二人は長編じゃないと面白くないのだろうか?
 「うちにあるまだ読んでない本」の中のミステリの在庫が切れかけ。仕方がない(おいおい)のでSFを漁る。ハリー・ハリスン『ホーム・ワールド』。

 今日は救急外来を診る当直。気が重い。
 ところが、わりと緩やかなスタート。9時前に脳梗塞の入院があったくらいで、あとは風邪ばかり。12時過ぎてから、元気そうな風邪の若い男ばかり数人来る。どうみても緊急性のかけらもないぞ。救急外来を24時間営業のドラッグストアと間違えてないか?

1月17日(月)

 患者を診て当直室に戻り、なんやかんやして眠りについてから10分後に起こされること3度。どうもタイミングが悪いんだよな。それでも結局6時間弱は眠れた。外来を診る当直の睡眠時間としては驚異的に長い。ありがたや。
 午前中は元気だったのだが、午後IVHを入れた後から急に全身倦怠感に襲われる。ね、眠い。

1月18日(火)

 オウムが名称を変更。「アレフ」だって。食堂でお昼ご飯を食べている時にニュースで知り、「アレフ・ヌルのアレフかあ」と思わずつぶやいたところを先輩に聞かれ、怪訝な顔をされる。なんか怪しい奴だと思われた様子。

1月19日(水)

 仕事はそんなに忙しくないのだが、担当患者の人数は増え続ける。

 ハリー・ハリスン『ホーム・ワールド』を読み終わり。なかなか面白く、最近読んだ本は不作続きだったので口直しになってよかった。こう、読んだ本が面白くないことが続くと、人生この先何かよいことがあるんだろうか、と悲観的になってしまうので。
 なんでこの本を買ったかというと、この本の続編『ホイール・ワールド』が面白かったからで、なんで『ホイール・ワールド』を買ったかというと、これがどうも思い出せないのだが。どっかの古本屋で安かったから買ったのだろう。
 『ホイール・ワールド』は、なんかすっげえ熱い惑星で、流刑者達が極地から極地へ1本道のハイウェイを通って移動するという話で、最近読んだ古い本(とはいっても原著は1981年、翻訳は1990年だが)の中で、珍しく心から面白い!と思えた作品だ。
 この『ホーム・ワールド』は、『ホイール・ワールド』の主人公が、管理社会で当局に逆らい流刑地に流されることになるまでの話で、舞台が地球である分、続編よりもインパクトが薄い。ちょっぴり未来っぽくあしらってはいるが(外から自動制御される車とか)、そこら中から盗聴されていてすべて当局に筒抜けなんてのは別段珍しくもない話だし、この主人公があのすごい惑星に流されることになるんだなあ、という思いがなければ、こうわくわくしながら読んだかどうかは疑わしい。でも、これだけでもすんなり読めて楽しめるサスペンスではある。
 で、この作品は三部作で、最後は"Starworld"なのだが、私の知る限りでは訳されていない様子。前の二作は売れなかったのだろうか。

 過去の日記に昨年6月分をアップ。

1月20日(木)

 転科・退院ラッシュで忙しい。大腸癌の患者が、いつ緊急手術になるかもしれないということで外科に転科。胆石の患者も外科に転科予定。
 この頃寒くなってきたので、循環器科、神経内科の患者数が増加。救急病棟は半分以上循環器科の患者だし、全病棟に循環器科、神経内科の患者が入っていて、ほとんど満床。新たな入院を入れにくい。という状況なのに、救急当番で脳梗塞を引いてしまった私。悪いのはみんなこの寒さだ。

 プーチ君(だっけ?)が気になる。アイボの超廉価版。ヤッターワンの小さいやつみたいの。いろんな色があるところも可愛いし。でも実際に見たらあまりにもちゃちかったり、人気殺到で増産間に合わず買えなかったり、するんだろな。

1月21日(金)

 仕事は総胆管結石の石取りの手伝いとか。
 このところカルテにbrタグを書きそうになる衝動と毎日戦っている。カルテってのは延々と残るので、うっかり書いてしまって、10年後ぐらいに誰かHPを開いている医者が見て、こいつ、タグ書いてやがる、とか思われると想像するとおそろしい。

 ここ数ヶ月髪を切りに行ってないので、大分長くなった。夕方、仕事が一段落して、上にあげていた髪を下ろした。そしてふと下を向きながら鏡を見ると、白い服を着て(白衣である)長い髪が垂れ下がった女が写っており、まるで貞子のようである。なんとおそろしい。
 夜、歯を磨こうとした時に、あの貞子のような姿を思い出し、恐ろしくて思わず周りを見渡してしまった。自分の姿に恐怖してどうする、とか思いながらも。

 オウム(アレフか)が内紛を起こしたらしい。不謹慎ながらいつも思うのだが、どうしてオウムってこうもニュース沙汰にふさわしい事件ばかり起こすのだろう。一連のオウム騒動のとき、毎日のように本当かおい、というような事件(国松長官狙撃事件とか村井幹部刺殺事件とか。後者はオウムが起こしたんじゃないかもしれないけど)が連発し、世も末だな、とか思ったもんだが、そのときの気分が思い出される。

1月22日(土)

 板井(突っ張りが得意だった元小結)が八百長を告白したらしい。やったね、頑張れ板井。八百長は絶対やってるだろう、そりゃ。元相撲おたくの私が相撲をあまり見なくなったのは、八百長記事が目に入りだし、自分でもやっぱり八百長はやってるんだろうな、と思いだしてからだから、やっぱり八百長が行われていると認めると、ただでさえ下降の一途をたどっている相撲人気はさらに落ち込むだろうし、相撲協会は絶対に認めるわけにはいかないとは思うけど。
 でも、ある程度八百長は行われてるんだな、という予備知識を持った上で相撲を見たほうが、楽しめるような気が私はする。力入れて応援した挙句、あれは八百長だった、ってわかるのも悲しいし。八百長ができるのは、ある程度強い力士だけ、という話もあるし(弱ければ金払わなくても勝てるので、星を売りに行っても買ってくれない)それはそれで仕方がないのでは。

 個人的にショックなニュース。阪神受験研究会が倒産したそうだ。大阪付近では有名な学習塾で、私は地元のマイナーな塾に通っていたんだけど、中学に入学したら、周りの子は「阪神」出身の子らばかりでびびった覚えがある。浜ほど有名ではないけど、大手だったのに。塾も倒産するのね。

 夕方から飲み会。昨日は車で家まで送ってもらったので、今日はバスで移動。案の定酔いまくり。飲み会の方は、飲み過ぎより食べ過ぎで気分が悪くなった。


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