6月1日(日)

 どうして名曲集収録のバッハはみんな「主よ人の望みの喜びよ」なんだ?いやあれも好きだけど、あればっかりじゃないか。ついでにウェブを彷徨っていて、ショスタコの7番は第1楽章で疲れて寝てしまうという記述を見つけて爆笑。そうか私だけじゃないんだな。昔私は、この曲を曲名ではなく、必ず第2楽章の途中で寝てしまう曲として覚えていた(笑)。

 ディ・キャンプ『闇よ落ちるなかれ』を読み終わった。初読かどうか自信がないが、それはさておき、1941年の発表だったとは。総統とか言ってるし。主人公に帰りたい気が全くなさそうなところにも驚いた。ともあれ、久しぶりにスラスラ読めて楽しめる本だった。『テクニカラー・タイムマシン』みたいな感じ?(誤解を招きやすい表現)。

 寺尾の断髪式をTVで見て、誰がとは言いませんがああやっぱり素敵と思ってしまった(私は寺尾のファンではありません)。ファンはいつまでもファンだな。

6月2日(月)

 夕方からバイト。

 先生から想定質問返答虎の巻メールが送られてきた(有難や)。「成功を祈る」って、あたしゃ最早「旅の恥はかき捨て」とか「あとは野となれ山となれ」とかしか頭に思い浮かばないんですが。。

 今さらながら『幻想の犬たち』を読み終わった。とてもよいアンソロジーですな。『ニューヨーク、犬残酷物語』はちょっと可哀想すぎるけど。ベストはクリストファー『同類たち』とマッケイ『悪魔の恋人』。あとシマックが懐かしかった。

6月3日(火)

 1日バイト。ミネソタさんとお友達。

 「〜の神様」ではなく、ただ「神様」ってのも凄い話だな。しかも、もう何年も前からずっと神様やってるんでしょ>八木。神様はつらい。

 式で中学高校の友人に歌を歌うように頼んだら、大騒ぎになっている模様。パート分けだの、アルト部分だけの練習用midiだの、じゃあ実家のピアノで音合わせしてくるわだの、事前練習に誰の下宿を襲うだの(笑)。

6月4日(水)

 おかしいな、去年こんなしんどいことは二度とするまいと思ったはずなのに。それはともかく「正」の字で数数えることを発明した人は死ぬほど偉いと思いますよ(>だから手作業で統計とるのやめろって)。

6月5日(木)

 こんなガラガラのスーツケースで行っていいのだろうか。よく考えたら、バナーやぬいぐるみが入ってないだけじゃなくって、夏服だから全然場所とらないんだな。コンタクトは箱ごと入れちまったよ。本たくさん持って行こ。

 ということで、止むを得ない事情により、明日からアメリカ行ってきます。新婚旅行でも婚前旅行でもありません。どうせ行くならサンクトに行きたかったよ。まずは無事にホテルに辿り着けるかどうかが勝負だな。

6月6日(金)

 飛行機は空席が目立ち、私の隣の2席は空いていたので、横になることすらできた。こんな飛行はまさしく、本物の幸福とそう変わらない、と思いながらぼーっと横たわっていた。

 何の問題もなくワシントン・ナショナル空港に到着。シャトルバスが恐くて(去年ニューヨークでバスに乗ってからひどい目に合ったから)地下鉄の駅まで歩いて行き、体力を消耗したり(空港内なのだが、私が乗ったノースウェストのエリアは端っこにあるので結構遠い)、地下鉄カードの差込み方が普通と違ってちょっと揉めたり、てな些細なことはさておき、宿の最寄り駅から宿とは反対方向にずんずん進んでしまい、中国大使館と思われる建物の前庭で、「法輪功なにもわるくない」のプラカードを立てて座禅してる人にぶちあたってさすがにこれは変だと気づくまで、荷物引きずって20分ほどロスしたのは疲れた。でも、これぐらいで辿り着けてよかったな。

 宿の周辺にはリスが多い。5、6匹がその辺でかけっこしてたりする上、全く人間を恐がる節が見られない。おまけに可愛くないぞ。

 夜はS先輩などと一緒にカニを食べにいった。とてもおいしかった。アメリカで美味しいものに出会えるとは(涙)。おいしかったよ〜かに。

6月7日(土)

 懸念していたのだが、スライド受付は何の問題もなく終了。発表の部屋、思ったよりでかいんですけど。というか会場のホテルが立派。

 受付をすますと、とっとと観光に。大雨の中、まずは自然史博物館へ。カケスな私としては世界一のブルーダイヤをまず見に行ったのだが、それよりもエメラルドの王冠とか、マリー・アントワネットの左右の大きさが違うばかでかいダイヤ・イヤリングとか、ルビーとか巨大キャッツアイとかに(キャッツアイでもでかいと凄いものですな)目を惹かれた。その奥は鉱物コーナーになっていて、水晶だの何だのがごっそりあったが、さして興味は持てず。たまに、おっと思ってじっくり見ると、紛れ込んでいたダイヤだったりして…やはりキラキラするものしかダメらしい(笑)。次いでエジプトコーナーに行ったら、猫マミー、コウノトリマミー、牛マミー(でかい)が陳列してあって驚いたり、恐竜コーナーに行ってトリケラでけえ、こんなのいたなんてウソじゃねえか、と思ったり、土産物屋に行って思いきり田宮模型が売られているのを目にしたりした。

 ええっと、目を疑うような体積の人が多い話はもう置いといて(日本の「デブ」という言葉では表現できん)、午後からは航空宇宙博物館へ。そういえば移動途中にメリーゴーランドがあったのだが、これが速い。ジェットコースターかと思うぐらい速い。アメリカ恐るべし。それはともかく、航空宇宙博物館は自然史博物館より面白かった。特に宇宙や飛行機に興味がない私でも、本物の狭苦しいオービターや、磨耗してて天神さんの牛状態の月のカケラや、しょぼい椅子の月着陸車、アメリア・イアハートの本物の飛行機(!)には興味津々。
 なぜ飛ぶか?の説明展示とか(子供用の実験遊具がたくさんあった)、月旅行の誇示とか(いくら誇示されても私や同期の子は生まれる前のことだし、特別な感銘は受けなかったが、一緒に行った月面着陸をリアルタイムでTVで見ていた先輩は結構感動していた)、宇宙船開発の歴史とか(初期の打上げ実験でサル打ち上げて帰ってきたはいいけど、埋込み器具回収のオペの麻酔事故で直後に一匹死んでたというのが何とも)、あと戦争について臆面もなくがんがん表示されてるのも、もの珍しかった。
 零戦とかメッサーシュミットとかトマホークとか色々あったのも凄かったが、第一次大戦コーナーに展示されていた、しらみを取る兵士の写真とか、書き込みのある写真(数人の兵隊が写っていて、それぞれ線ひっぱって、killed とかwounded and killedとか書いてある)が恐かった。
 太陽系コーナーもそれなりに面白かったな。ジュピターでかいぞ。ヴォイジャーのメッセージレコードの複製もあって見ていたら、同行の教室の人にさんざんこれだからSFマニアはとか言われる。別に私は宇宙旅行にもファーストコンタクトにも特に興味はないんですけど。

 夜、明日の発表の留意点をS先輩に教えてもらった後、ドン・キホーテとキャンベルのカルメン見て寝る。私しゃ、発表はあとは野となれの精神で臨むつもりだったのだが、同期の子が全部ビデオに収めると言い出したので、そっちの方に緊張。嫌すぎ。

6月8日(日)

 ええ、発表本体はあまり思い出したくないので、思い出さないことにして…横に座ってた私の2つ前の発表の中国人が、チェアマンはいい人だから大丈夫だよ、と言ってくれたり、出て行くときにgood luckと声をかけたり、終わった後に道端で会ったらnice talkと言ってくれたりした。中国人良い人だ。
 最大の問題の質問タイムは、イタリア人っぽい(さしたる根拠なし)おばさんに何かよく分かんないこと言われて、分かんねえよ、と思いながら口からでまかせを言ったら、捨てゼリフっぽいものを吐かれて去って行かれた。あのおばさん、確か去年も誰かに捨てゼリフ吐いてたような気がするのだが…。その後はチェアマン2人に、サクラまがいの優しい心にあふれた質問をされて、無事終了。
 壇を下りると、後ろからエマ似の、色が浅黒くて無茶苦茶格好いい男の人が質問してきた。次の人の邪魔になると言われたので、二人して廊下に出て話していたのだが、あんな格好いい人に話しかけられるなんて、やっぱりアメリカくんだりまで行くと、ちったあいいことがあるものなのね(違)。ちなみに同行の教室の人たちも、今あいつが格好いい人にらちられていった!とじっと注目していたらしい(笑)。何言ってるかわからないアジア人にもやさしく対応してくれたいい人だったから、こっちも答えるのに必死で、あまり顔をじっくり見られなかったのが残念だ。

 終わると今日は国立美術館へ。しかし、昨日の博物館巡りで疲れていたのと、珍しく時差ぼけがはっきり出ていたので、かなりダレ気味。あれだけの広い空間に、でかい絵が惜しげもなくかけられている雰囲気は素晴らしかったが、昔の絵は抹香くさく痛そうな絵ばかりで、あまり気をそそられなかった。一番見たかったフェルメールが改装中で見られなかったのは結構ショックだった(別のところにあったのかもしれないが、そこまでの気力体力はなし)。

 ぐったりしながら出て、今度はスパイ博物館へ。入場制限があって入場料も取るしどんなところかと思いきや(スミソニアンの国立博物館群は全部タダ。でも国威の誇示・国民の教育としては十分見合うものなのかも)、これが物凄く面白かった。スパイが道端のどんなものを目印にしているかから始まり、ボタンがカメラになってるコートとか、実際にそこから毒出して飲んで自殺した直腸に入れてたカプセルとか、消えるインクで通信文が書いてある葉書とか(表の文は本当にどうでもいいような内容だった)、実際に使われていたものを見るのは実に楽しい。

 スパイ関連で暗号の歴史とか言って、メネメネテケルウパルシンから始まり(そりゃま、暗号っちゃ暗号か)、ロゼッタストーン(もちろんレプリカ)、トロイの木馬、メアリ女王、シェークスピアの暗号(根拠のない説だとわかった、と書いてあった)から、一次大戦のナヴァホ族の話、エニグマ暗号機械(おお本物だ)、チューリングの写真まで飾ってあった。実際のスパイ事件のパネルもたくさんあって、南北戦争時代に黒人の変装して活動していた女スパイとか(驚)、里心がついて家族と頻繁に連絡取り合ったばかりに見つかって処刑された人とか、ローゼンバーク事件(マッカーシズムの時代ぐらいにスパイ容疑で捕まり、無罪を主張し続けて電気椅子で処刑されたアメリカ人夫婦)のパネルもあった。
 冷戦つながりで、ロシア国歌が流され(男女の合唱付きだったので聞き入ってしまった)、実際のソビエトの国家反逆罪の裁判記録が飾ってある部屋とかもあったし、とにかく盛りだくさん。そこここでトラップされて見ていたら、教室の人達は待ちくたびれていて、またこれだからSFマニアはと言われたが、SFとスパイはそれほど因果関係ないだろ(どっちかってとミステリ)。

 昨日の夕方、御飯を食べようとみんなで彷徨っていたら、筋肉誇示男がくねくねと腰を振るナゾのパレードにぶちあたり、ふと気付くと周りに妙に男同士のカップルが多いので不審に思っていたのだが、今日はテントを張ったお祭りに遭遇。そこで先輩が調べてみると、ワシントンでは6月の週末はゲイ祭りが行われる慣わしなのだそうだ。
 レインボーがゲイ祭りのシンボルらしく、アメリカ国旗の星部分以外をレインボーの縞にした旗とか、ちゃちいレインボーブレスレットとかががんがん売られていた。どう見ても軍人のような素晴らしい体と服装をした二人組が手つないで歩いているのは迫力あったな(でもアメリカ人であるからして、ほとんどはデブカップルでございました)。地下鉄の中で(関係ないが、ワシントンの地下鉄はとても深く、地上に出るまでの長い長い長いエスカレーターが恐い)肩に活字体の漢字で「同性愛」と刺青をしていたのは、ちょっとデザイン的にどうかと思ったが。
 あと、散歩していたゲイカップルが連れていたフレンチブルドッグが、レインボーカラーの花のレイをかけていて可愛かった。夕食の帰りにゲイ書店に寄ったら、その花のレイをくれたので、喜んで持って帰る。たあにかけて散歩させよう〜。

6月9日(月)

 同行の人たちは朝早く出発したので、宿で本読みながらのんびり朝御飯を食べてたら、宿の人に本見せられて、これあなたの?読める?と聞かれた。読めないよ、それ中国語、私日本人、と言ったら、じゃあ誰の忘れ物かねえ、と悩みながら去っていったが、ちらっとみた限りでは法輪功のパンフに見えましたが…配ってたのか?

6月10日(火)

 帰りの飛行機も全く問題なく(サービスは大味であったが)日本に到着。関空は遠いねえ。

 タッカー『静かな太陽の年』を読み終わった。どうも未読だったような気がする。たるい進み方だと思っていたが、予想していたより面白かった。最後まで黒人ネタ一本で引っ張るというのはなかなか凄いかも。



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