1月10日(水)

 実習室の引越しの日なので早めに大学へ。やることは掃除や片付けくらいで、人もたくさんいたので、だらだらしゃべっていただけのような気も。
 夕方からは虚しく実験(いや例によってうまくいってないので)。

 夜中から同好の士とフィギュアスケートのビデオを見る。2月に行われるグランプリファイナルの出場予定者の演技を見ていたのだが、同好の士はどうやらイリヤ・クリムキンにはまった様子。もっと世間の人にクリムキンを知らしめねば、と叫び出した。

 クリムキンは、去年くらいからシニアに出てきたので(歳は20歳だが)TV放映されることも少なく、また、今年はまだ去年のフリーのプログラムと同じものを滑っているので、日本で簡単に見ることができる演技はショートとフリー1種類ずつだけである。
 だが、それだけでも彼の凄さは充分に堪能できる。もう最初の目つきからして違うのである。彼は自分の世界に住んでいる。千手観音のようなスピン、人間とも思えないナゾの体勢をとるイーグル、両方向に廻るスピン、シースルーの衣装……ああ言葉では決して説明できない。死ぬまでに是非1度彼の演技を見て欲しい。催眠術のように彼の世界に引き込まれることだろう。

 プルシェンコは、技術、表現力とも優れてはいるが、まだ彼自身の個性を確立しきっていない感じがして(そこがまた楽しみなのだが)衣装やプログラムがどんなものか大変気がかりである。しかし、クリムキンの世界はゆるぎがなさそうだ。背はさほど高くないが、随分大きくなったとはいえ、まだどことなく少年っぽいプルシェンコに比べ、結構がっしりしている。

 残念なのは、クリムキンがロシアの選手であることだ。つまり国際試合の出場資格を得るのが大変なのだ。何しろロシアには、世界チャンピオンのヤグディン、ヨーロッパチャンピオンのプルシェンコ、顔かたちの美しいアプトがおり、他にも競争相手には事欠かない。
 3人枠なら、まあ上2人は決まって、3番手をアプトと争うとなると…。うーん、アプトはなんと言っても、顔かたちが素晴らしいからなあ。ロシアだけ4人枠にして欲しいものだ。

 クリムキンはジャンプが不安定で、よくすっぽ抜けたり、転んだりする。そのため点数も上がらず、今年のロシア国内戦も4位だった。
 だが、ジャンプなんてどーでもいいのである(いや彼も4回転を跳べるのだが…)。誰もクリムキンにそんなことを期待していない。ジャンプなぞ跳ばなくても彼は充分に素晴らしい。プレゼンテーション(芸術点)だけはいつも高いし。
 とは言っても、ジャンプを失敗すれば成績は振るわず、大会出場率もTV放映率も下がることになる。だからお願いだからちゃんと跳んでくれ!

 グランプリファイナルでは、ジャンプを跳ぶ以外は、ひたすら両手でバランスを取って滑っているだけに見えるティム君(ティモシー・ゲーブル)に是非勝って欲しいものだ。ゲーブルは4回転跳びまくるから無理そうだけど。なるべく上位に上がって、クリムキンここにあり、と世界中に知らしめるのだ!(勿論プルシェンコよりは下でね)

 同好の士はかなりはまったらしく、クリムキンの演技を見るときは明らかに他と態度が違って叫ぶし、顔がアップになるとぼーっと見ているし、クリムキンに関しては何事も良いようにとるし、アプトは俳優になっちまえ(そうすればクリムキンは国際試合に出やすくなる)と言い出すし。うーん。気持ちはわかるが(笑)。

1月11日(木)

 大学に行き、ぼーっと実験していたら夜になった。今日は頭を全く使わなかった気がする。

 イーガン『祈りの海』をやっと読み終わる。一番インパクトがあったのは「ミトコンドリア・イブ」。それから「繭」と「貸金庫」。
 技術の発展を社会がさまざまな解釈で利用し、それに翻弄される研究者が主人公の「ミトコンドリア・イブ」。「もしぼくがリーナを、ふたりが意見を同じくする範囲でしか愛せないのなら、そんなものは愛でもなんでもない」という主人公の姿勢に当てられたかも。
 「貸金庫」はやはり自分に会う場面が衝撃的。こうなんか状況がリアルに想像できるだけに。「繭」は真相の明かされ方と、そのまとまり様が好き。
 とりあえずネタはどれも質が高いので、あとは付加されるもの(この場合、多くは主人公の考えや選択)の好みの問題も大きいような気が。
 個人的には、これだけ良い話なら、コニー・ウィリスとかの方がピリリとしていて好きなのだが、まあこれはイーガンの短編集であって、ウィリスのじゃないので(笑)。

 NHK杯のビデオを見返したら、イリヤ・クリムキンが何気に4回転3回転を跳んでいた。クリムキン…あんたって奴は…。日本人なら大騒ぎされるであろうに、不憫なやつ。
 しかも、4回転3回転2回転を跳べるという噂まで目にした。そんなことできるなら、もっとジャンプの成功率を上げてくれ。

1月12日(金)

 大学で、同期の子が「3秒ルール」の話をしていた。懐かしい。「食べ物を落としても、3秒以内なら拾って食べても汚くない」という主張で、私が子供の時はごく一般的に受け入れられていた。「あ、4秒たったのに食いやがった、こいつ汚ねえ」とかいう無法なことがまかりとおっていたものだ。しかしこれは近畿ローカルか?

 夜は先輩が通販で買った石狩鍋。いくらは嫌いなのだが、火を通すと卵の味がして美味しいことを知った。

 今日はラリックトロフィー(フィギュアスケートのグランプリシリーズのフランス大会)の放映日。スタニック・ジャネット(フランス)が独特の動きでなかなか面白かった。クリムキンほどのインパクトはないが。
 勝負のほうは、ヤグディンが1人で格の違いを見せ付けていた。ヤグディンの振りは下品だと思うし、個人的にはあまり好きではないのだが、最早好き嫌いのレベルの問題ではなく、他の選手とは比較にならない。ロシアのセロフの演技が放映されていて、どうしてこれが放映されたのだろう、と思っていたら3位だったりするし。
 後で調べたら、ストイコ(カナダ)とワイス(アメリカ)が棄権していた。なるほど。みんな怪我には気をつけてね。
 しかし、交互に派遣されるヤグディンとプルシェンコだけが飛び抜けているグランプリシリーズって…(まあアメリカ大会では、ヤグディンの不調に乗じたゲーブル君が優勝してはいるが)。

 アリー・my・ラブ3。ジョンがいい味出してました。そういえば、アリー役のキャリスタ・フロックハートが養子をもらうそうで。現実にそんなことするのね…。

1月13日(土)

 保険に入れるから外交員に面を見せに来い、と言われたので、午後から実家へ。保険関係は一瞬にして用が済み、後はパソコンのセットアップの続き。何だかんだとトラブルがあり、やっとメーラーの設定ができたと思ったら、親に「メールアドレスって何?」と言われ、全身の力が抜ける。こんな脱力は高3の子に英語を教えていて「主語の後に動詞が来るでしょ?」と言ったら「動詞って何ですか?」と聞かれた時以来だ。もういやだ〜。

 家に帰ってきて、同好の士のためのクリムキンビデオを作成。3大会分の演技に、ちらっと映っているところを合わせても30分もない。頑張れ、クリムキン。TVに映るのじゃ!

 夜は世界プロフィギュア選手権の放映があった。有名どころが出ていてそれなりに面白い。
 ルシンダ・ルーの名高いスピンはやはり凄かった。あと、レオノーワ・フバルコ組のボレロ。リフトしまくりで、バレエと組立体操を合わせたような感じ。いいものを見てしまった。
 イリヤ・クーリック(長野男子シングル金メダリスト)は…。アーティスティックプログラムは面白かったが、もう少しどうにかならないものか。あの高いジャンプはどこに行ったんだ。3回転跳んでくれよ〜。私しゃ悲しいよ。まだ23でしょうが(涙)。

 あ、でも一番びっくりしたのは、佐藤有香の「牧神の午後への前奏曲」。この曲、イリヤ・クリムキンもフリープログラムで使っていて、なんか妖しい雰囲気の曲だと思っていたのだが、佐藤有香が滑るとこんなにきれいな曲だったのね…。さすがクリムキン、さすが佐藤有香(優勝してました。ちなみに男子の優勝者はキャンデローロ)。

1月14日(日)

 非生産的なことをしていて、とても楽しかった。
 夕方から、先輩用にクリムキンビデオをもう1つと、自分用のプルシェンコビデオを作成。去年一昨年の世界選手権のビデオをダビングしていると胃が痛くなる。

 今日はBSで昨年のNHK杯の放映があった。エキシビジョンの最後の場面がちょっとだけ映って嬉しかったり。

 1週間前からのTV情報誌を今ごろ買ったら、いでまゆみという人のコラム「今年キそうな人たち」にプルシェンコの名前が出ていた。その形容が「銀盤のプリンス」で「マジ天才なのよ。完璧なの」。うーん、やはりプリンスと言われるか…。まあ衣装が衣装だからな。似てない絵(鼻が実際より低い)とビールマンスピンをしているところも描いてある。侮れん>TVstation。

1月15日(月)

 寒い。寒い。
 今日はとてもお腹が空く日だった。食べても食べても満足感がない。キャラメルコーン1袋一気食いなんてしてたら太る。絶対太る。

 落ち込みモード再び。昨日ビデオをダビングしたせいか。

 ビデオ鑑賞の時間が増えたため、本をほとんど読んでいないが、勿論SFマガジンを読むことを忘れたわけではない。
 小林泰三「門」は説明文体が今いちだと思うものの、まあ要するにこういう話に私は弱い。
 が、神林長平の新連載「膚の下」はちょっとどうかと思う。まあまだ始まったばかりだから、どうなるのかわからないけど。

1月16日(火)

 午前中は外来バイト。が、あまりの寒さに最初の1時間は患者が1人も来なかった。それからもぽつぽつで、結局普段の4分の1くらい。恐るべし寒波。

 寒さに凍えながら原付で大学まで戻る。今日の午後から学生実習が始まるので、教室員みんなで実習室へ。そこでまずすることは、もちろん学生の品定め(笑)。実習書を買うために学生が一列に並ぶので、そこをじっくり見物するのだ。なんか茶髪の男の子が物凄く多い。似合う似合わないをちょっとは考えた方がいいのでは。あと、解剖の白衣(解剖実習で使っていた白衣。ホルマリンがついて色が変わっているので一目でわかる)を着てくるのはやめろ。

 しかしまあ、こんなに早く赤い名札(学生とは色が違い、医者であることを示すようなものなので、一応憧れではある)をつけて実習に出ることになるとは。先生が実習内容を説明している間(同じ内容を受けたはずなのだが、何一つ記憶にない)横でまじめに聞いたりする。
 が、いざ実習が始まった途端、何やら端の方でバタバタしだした。実習に必要な先生が、診療所に来て下さい、と呼び出されたらしい。何でも連絡ミスで今日は行けないことが伝わっていなかったのだとか。ということで、急遽雑兵たる私が代わりに派遣されることに。うう、寒いよう(泣)。
 診療所の方も割と暇だった。昨日4時間弱しか寝てなかったので、待ち時間は意識朦朧。
 
 夕方帰ってきてから、だらだらと実験。10時過ぎにデータが出て、突然やる気モードになったりする。

 今日はドイツ語を久しぶりに読んだ。Heute とかjetzt とか簡単な単語の意味がわかったり、前置詞を見分けられたりするだけでも、ドイツ語を履修した甲斐があったというものだ。ドイツ語の先生、ありがとう。役に立っています! Eiskunstlauf というのがフィギュアスケート、という意味なのね〜。
 しかし、1年だけ履修したフランス語は、数すら数えられない。やはりテストの前の日の勉強だけでは、何の身にもならないな。今となっては感謝です>ドイツ語の先生。医学関係の仕事には何も役に立ってませんが。

1月17日(水)

 この頃、教室のみんなに「早く死ね」とよく言われる。そう言うと必ず私が「3月末までは絶対に死なれへん」と言うので面白いのだとか。よしもと新喜劇(必ず同じギャグを言う)に期待するものと一緒らしい。

 何回見ても、最初に衝撃を受けた演技が一番良く感じられるような気がしないでもない>プルシェンコの昨シーズンのショートプログラム「剣の舞」。

1月18日(木)

 お昼は鍋焼きうどんだった。

 午後から学生実習だったが、実験があったのでパス。それどころか、実習室に持っていかれた顕微鏡を追って行き、学生を押しのけて自分の細胞のカウントをしてしまった。ごめんね〜。

 ばたばたと実験を済ませて当直先へ。針仕事とか、マガジン読んだりとか。
 森青花「銀の横綱」。結末はちょっと不満だが、面白かった。そのスジの人以外にはわからなさそうな小ネタが多いのが、いいのか、という感じだが。
 で、なぜ鋼鉄山の相手が三代目双羽黒なのかが気になるところである。不知火型だから?それとも、三白眼と描写されていることでもあるし、単に作者の好み?

1月19日(金)

 4時頃病棟に呼ばれ、その後眠れず。睡眠リズムが狂いまくってるな。来週に備えて、朝7時頃まで起きていられるように調整したいところだが。

 お昼はポークシチューと黒糖プリンだった。
 午後からは学生実習に顔を出し、前の方で同期の子がデモの実験をするのを見守る(というか横で先輩とうるさく騒ぐ)。
 終わってから少し実験し、早めに帰宅。

 マガジンはまだ読み途中。
 谷甲州「パンドラ」は、ゲノム云々はともかく、ヒマラヤを越えようとする鳥さんの生態を追う場面がとても楽しい。続きが楽しみ。
 田中啓文「黄泉津鳥舟」はとにかく面白っす。それ以上言いようが。

1月20日(土)

 髪を切りに行こうと外に出たら、柔らかい雪がどさどさ降っていてびびる。地面も溶けかけた雪に厚く覆われていたので、遠出は中止。休日でよかったよ。
 必要なものがあったので、近所のイズミヤまで歩いて買出しに行くが、大した距離でもないのに、裾は濡れるし滑りそうだし。

 帰ってきてからはビデオのダビングとか、針仕事とか、洗い小芋が100円だったので豚汁作ったりとか。でもこの頃全く料理をしていないので、他に何を入れるのか思い出せなかったり。

 そういえば、今日はセンターなんだよなあ。あの狂騒の日からもう○年か(数学でミスったと思い込んだことを始めとして色々あった)。

 夜、同好の士とビデオ鑑賞。長野オリンピックのフィギュアスケート男子シングルフリーを見て、よよと泣き崩れる。
 イリヤ・クーリック……こんなに高くて流れがあって、きれいなジャンプを跳んでいたのね。こないだのワールドプロのジャンプは一体何なのよ〜。まだ3年しか経ってないでしょうが。
 あんな曲(「ラプソディー・イン・ブルー」とか「愛の夢」とか)を滑っても似合ったり、ちょっと肩をすくめただけでも絵になる奴はあんたしかいないのよ。おまけに、あんなに美しいジャンプを跳べる人は、今のアマチュアの中にもいない!!練習してくれ、お願いだ。もう一度あの美しいジャンプを見せてくれよ〜!よよよよよ。
 いや本気で、息をするのも苦しいぐらい悲しいよ、私は。

 あとは、「アレクセイ・ヤグディンはやっぱりコーチを変わって(昔はウルマノフやプルシェンコと同じコーチについていた)正解だったなあ」と再度納得したり。彼に長野オリンピック当時のあの路線はムリがありすぎ。

 その後、ビデオでクリムキンの衣装をよく見るうちに、「実はクリムキンは微妙にデザインが違う衣装を2つ持っているのでは」疑惑が浮上したりする。前面に葉っぱ、後面に穴がたくさん開いた衣装なのだが…なんか葉や穴の数が微妙に違うような…。TVの映り方にもよるし、いやそもそも別にどうでもいいんですがね。

 カウンタが16000を廻ったらしい。


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