6月11日(日)

 朝起きると、左眼がまったく開かなかった。おそるべしアレルギー。

 午後から実家へ。たあ(犬)がもうすぐ全麻で歯石除去術を受ける予定なので、心配になって顔を見に行ったのだ。たあは、元気ではあったが、やはりどんどん年寄りっぽくなっていっている。11歳だからなあ。体に張りがないし。

 半年程前に親が知合いから押し付けられた漫画(全く巻が揃っていない色々な古めの少女漫画)が紙袋2袋分あり、それを親はずっと車のトランクの中に放置していて、どうしよう、どうしようと私に言うので、今話題(笑)のブックオフに叩き売りに行った。そのブックオフは高いし、百円均一にはろくな本がないし、売るのはかなり嫌だったが近所にはそこしかない。
 査定してもらうと、ほとんどが廃棄処分になった。まあ汚いのが多かったし仕方がないんだけど。残りで420円。京都駅まで帰れるくらいの運賃にはなった。
 実家からドリトル先生シリーズを3冊奪回して家に帰る。

 ローザンヌバレエコンクールの再放送を見逃した。しくしくしく。だってTV情報誌には書いてなかったんだもん。やっぱり新聞見なきゃ駄目だな。しくしくしく。

 んで、恐怖の市民税の納付書がついに来た。去年就職してて今年から無職の私が最も恐れていたものがこれである。覚悟はしていたものの、予想よりも高い。うううう。どろぼう!
 健康保険料はもう払ったし、これを払ったらあと恐いものは年金だな。それと授業料。

6月12日(月)

 午前中からばたばた実験。今日の実験結果でも、私の使っている遺伝子には効果が認められなかったので、とうとうこの遺伝子はあきらめることに。しくしく。その上それとは別に不吉な結果が出ている(これは私だけではなくうちのグループの人みんなに関係がある)ので、それを検証することになった。
 しかしそれだけでは気分が暗すぎるので、次の実験が決まるまで別の有名な遺伝子を使って実験することに無理矢理したりする。

 この方向転換で、学生時代にやっていたのと同じ手技の実験をすることになった。およそ5年ぶり。しかし学生時代はちゃんとしたノートなど作っていなかったので、5年前のメモやなぐり書きの計算式を見ながら、何とかしてやり方を思い出そうとする。恐ろしいことに、どうも京フェスの実行委員長だった年らしく、メモの合間に京フェス関係の電話番号だのやる事リストだのが書いてあったりする。なんつういい加減な。

 今日も「ロデムへんしん」とか歌っていたら、「すっかりこの研究室の色に染まってるな」と先輩に声をかけられる。すると別の先輩が「何を言うんですか。この人は元からです。むしろ悪影響を与えています」だって。なんだ悪影響ってのは。

 夕方秘書さんが教室にやってきた。この秘書さんはこの3月まで常勤で働いていて、教室最高の実務権力を握り(教室費の取りたてとか)恐れ敬われていた人なのだが、4月から鍼の学校へ通うことになり、今は夕方だけバイトで働きに来ている。しばらく前から教室の人達に、練習台ということで、覚えたてのマッサージをしてくれるようになった。
 今日私も肩だの首だの背中だの指圧してもらい、痛くても間隔をあけてゆっくり押してもらえば、その痛みが快感になるということを知ってしまった。ああ。癖になりそうだあ。

 珍しくマガジンの収録短編を読んでみたりする。でもあんまし面白くなかった。私の周囲では好評の『帰還』も何かいまいち。自分の意志でああなってしまったんだしねえ。そういう問題ではないような気もするが。家族が可哀相だ。

6月13日(火)

 だらだらと実験。予想通り途中で失敗したりする。

 たまたま去年の日記を見たら、1年前の今日は、外科手術後の敗血症の患者さん(担当した患者の中でも最高クラスに重症で大変だった)に再手術を行った日だった。再手術を含め1か月に及ぶ集中治療で、命に別状ないまでに回復して外科に戻っていかはったが、今元気にしてるかなあ。あれから1年しか経ってないのか。5年くらい前のような気がする。

 前々から許すまじ、という話を聞いていた「金田一少年の事件簿」だが、こないだ売りに行った漫画の中に数冊入っていたので、選り分けて家に持って来た。占星術殺人事件のネタバレが入っているというのは知っていたが、第2話だとは。しかも第1話から黄色い部屋だし。ストーリーも、占星術殺人事件のネタ以外の部分はあまりにもひどく、あのネタを貶めているかのようだ。
 『占星術殺人事件』は数少ない心から感動した&驚いたミステリ(私はあまりトリックとかに興味がないのだが)。それがあんな風に使われ、しかもネタバレしているという警告もなしに、アニメ化までされてしまうなんて、まさに万死に値する!この漫画を読んだあとに『占星術殺人事件』を読むどこかの人のことを考えると涙出そう。懲役刑くらいには値すると思うが。
 でも読んだ身としては、死体の絵とか人形の場面とか見て、やっぱし絵で示されるとかなり気持ち悪いよなあ、文章でも恐かったもんなあ、と感心したりして。

 今年の京都SFフェスティバルの日時(11月11、12日前泊)・場所(京大会館)が決定。

6月14日(水)

 DNAを数種類の酵素で切ろうと思い、「くらわん、ひんでぃー、ばむ。くらわん、ひんでぃー、ばむ」と酵素の名前を唱えながら冷凍庫から出そうとすると、横から先輩が「さっくわん、えこ、ばむ。さっくわん、えこ、ばむ」と大声で言ってきた。こういう事する人ってどうしてどこにでもいるかな。

 今日使ったプラスミド(円形のDNA)のラベルの字にどうも覚えがあると思い調べてみたら、4年前に私が作ったプラスミドだった。学生の時から今の研究室に出入りしていたのだが、その時に作ったものらしい(作ったことは全然覚えてなかった。それどころか、こんなプラスミド作ってた人いたのか、また奇特なことを、などと思いながら冷凍庫の中を探していた)。全然信用ならねえ(品質が)。古いものだというだけで信頼しにくいというのに、自分が作ったとなればなおさら。しかし、ということは今作ったものも3年たてば信頼できなくなるのかと思うと、まじめに実験せねば、とちょっと反省したりして。

 んで実験の方はいろいろあり、9時頃には、今日は1日なかったことにしよう、という結論に落ち着いた。腹が立つので先輩と居酒屋に行ってご飯を食べ、整形外科の恐ろしい話など聞く。

 今日は1日なかったので、今年は365日しかありません。
 
6月15日(木)

 今日は何をしていたのかというと、日本学術振興会の何たら(早い話がお金を支給してくれる)に応募する書類を書いていた。応募書類とはいっても、これがなかなか半端じゃない量で(研究の説明だの背景だのを書かせる)規定もややこしく、この申込書を書けるか書けないかで知能と忍耐力を試しているのではないかと思ったのだが、先生の意見では、これは単に猿どもほうら苦しめ、と苦労させて喜ぶためのものなのだそうだ。

 夕方、先生が「ああこれで俺は地獄に落ちる〜」と言いながら、私と同期の子3人分の推薦書を書いてくれた。およそ30行に渡って私がいかに素晴らしい人間であるのかと美辞麗句が並べたててある。こ、これは間違いなく地獄に落ちるな。しかし、他の2人の推薦書には「人間的には真面目で」という言葉が入っているのに、私のには入っていなかった。「いくら俺でもさすがにそこまでは書けなかった」らしい。くそぉ。
 ほとんどまる1日これでつぶれた。でもどうせ取れなくて来年も同じ苦しみを味わうんだろうけど。

 ところで、今うちの研究室では、私を競輪選手にする計画が立てられている(泣)。太股に遺伝子導入して、すげえ速くしてがっぽり稼がせるらしい。どうして私かというと、その方が意外性があるかららしい(泣)。

6月16日(金)

 朝から学振の書類の事で、大学の庶務の人とやりあう。「私も今年からここに来たばかりで知りませんので」だって。ふざけんな。じゃあ調べろよ。こいつ書類を配付すると予告しておいて、取りに行ったらまだ来てませんといい、すぐにいるので調べて下さいと言うと、机の上の書類の山から問題の書類が出て来た、という話がすでにあるやつで、全然信用できない。給料もらってんだから働けよ。結局そいつが問題を学生課にたらいまわしにし、担当の学生課の人が親切な人で(この人はなぜか私の名前を覚えている。謎)色々動いて問題を解決してくれ、事無きを得たが。しかも、書類を提出しに行ったとき、さらにぐずぐず言ったらしい(伝聞)。許し難し。

 と、久しぶりに激怒りしていたら、そばで見ていた先生が、昨日書いた推薦文は誤りだ書き直さねば、と。曰く「すぐに怒る。実験が粗雑だ。時々奇声を発する。他人の本棚を見たがる」……。

 大急ぎで実験して、2時半過ぎに大学を出る。今日は日本海沿いの病院での当直。百足に刺された人とか来た。百足に刺されたときは、死んだ百足を入れた油をつけると良くなる、と昔よく近所の人が実践していたが…。

 当直室で井上雅彦『竹馬男の犯罪』を読み終わり。ずっと「ちくばおとこ」だと思っていた(なぜだ?)のだが「たけうまおとこ」なのね。割と面白かった。大風呂敷広げすぎで、説明つくのかと心配しながら読んでいたのだが、思ったよりまともなオチ。もう少しきれいにまとめてあればもっとよかったのになあ。あと、医学的説明にちょっと無理が…。

6月17日(土)

 夜中は呼ばれなかったが、暑さのため悶々として眠れず。
 午前中は外来。午後からは、看護婦に目の前で嘘をつかれたり。よくあることなので気にしない癖がついていたのだが、久しぶりだったので怒りモードに。でもその看護婦は偉そうな人だったので(婦長クラス)勝つのは難しかったりする。

 夕方当直室の電話がなった。事務からで「当直の先生に、と言って電話がかかってきてますが、どうしましょうか、この頃マンションの押し売りの電話とかが多いので、こちらで切りましょうか」と言われる。「切って下さい、お願いします」と言ったが、すぐにまた電話が。「MRのこと、と言ってるんですが」MRと言うんなら、何か患者に関わることなのだろうか(この病院にはMRIの機械がある)と思い、電話をつないでもらう。「私どもでは税金対策の一環として先生方にマンションの購入をおすすめ…」おっ。前の病院によくかかって来たのと全く同じ口上だ。思わず「MRの話じゃないんですか?」と言うと「ええ、ですからマンション・リース」。をい。やめろよ。

 首が痛い。帰りの電車の中で、寝ながら首をがくっと大きく振ったのが原因だ。いつからこんなに寝相が悪くなったんだ、私は。

 スタンリイ・エリン『鏡よ、鏡』を読み終わり。今年のセミナーの時に神田で買った本だが、買った理由は(1)後ろの内容紹介があまりにもつまらなそうだった(2)スタンリイ・エリンだった(3)150円だった、である。
 (1)の理由で買ってしまったのは、私が後藤さんの後輩だからである。何しろ「しかも床の上には拳銃で胸を撃たれた大柄で豊満な女が息絶えているという、そんなおぞましい光景を目前にして?拳銃はわたしのだ。が、女は知らない。半裸の女。」という調子。これに関しては(1)内容紹介を書いた人が悪い(2)訳者が悪い(3)本当につまらない、という3案が出た。
 読んだ感じでは、訳はちょっときていたが、やはり(1)。単に内容紹介がひどすぎる。中身は面白かった。途中まで『プリズナー』かと思ったが、いい感じ。満足。

6月18日(日)

 12時過ぎに大学へ。それから知合いのお宅へ伺う。すごい家だった。高級そうな飾り棚とか机とか椅子とか。
 そこで、貝柱の何とか、豚バラの何とか、ラタトゥイユ、豚肉のベーコン包み、鴨のローストの青紫蘇風味、キッシュ、鶏の丸焼き、苺のタルト、クリームブリュレ、黒砂糖のアイスクリーム、などを次々といただく。どれも死ぬほど美味しかった。しかしこの料理の大部分を、一人で作ってしまう知合いはいったい何者。謎は深まるばかり。
 家人が飼っているというウサギを見せてもらった。思ったより可愛かったけど、目がぐりぐり異常にでかくて恐かった。こないだのウサギ(実験用)は耳がやたら長かったしなあ。ちなみに人間を識別してなついたりはしないらしい。

 料理を食べながら、白ワインだのビールだの日本酒だの(赤ワインは飲めない、とごねて出してもらった)を飲んだので、家に帰りついた後しばらく意識がなかった。復活したら、すでにして二日酔い。下を向くと世界がぐるぐる廻ったりする。1Lお茶を飲みながら、いつものことではあるが、家で点滴できれば便利なのになあ、と思う。寝てる間に自動的に水分が体の中に入るなんて。飲む手間が省ける。家が開業医のひと、便利だよな。

 今日はあの方の誕生日。おめでとうございます。

6月19日(月)

 二日酔いのため5時過ぎまで眠れなかった。9時に起きて大学へ。1日中実験でばたばた。BAP処理をするのをすっかり忘れてトランスフォーメーションしてラピッドしたら、当たり前だがほとんどセルフライゲーションだったのでびっくり仰天した(←ものすごく馬鹿。普通はやる前に気付く)。ってお経よりも訳分かんねえ文章だな。

 今日はずっと胃(の部位の辺り)が痛かった。原因は間違いなく昨日の暴飲暴食にあると思われる。しかし「せんぱあい、胃が痛いんですう」とすりよると「あんた内科医やろ、私は整形」と言われ、それではと内科の先生に胃が痛いと訴えると「ロキソニン(消炎鎮痛剤)しかないけど(←これ飲みすぎると胃が荒れる)飲む?」と言われ、別の先輩からは「胃癌のたたりや」(私が飼っている細胞は胃癌)と言われ…。きっといぢめによるストレス潰瘍だ。

 何とかという選挙候補者の宣伝車が「タレントの和泉修さんが応援にかけつけてくれています」と連呼しながら河原町を走っていたので、ほんまかいなと見に行くと、宣伝車のタラップでにこやかに手を振っていた。あっほんとに和泉修だっ、と思わず指さす(失礼な奴)と、思い切りこちらに視線を合わせて手を振られてしまった。しかし、なぜ和泉修。

 こないだ実家からもらって来た「金田一少年の事件簿」飛び飛び8冊を読み終わった。人が殺されてたり、おどろおどろしてる絵はとても恐い方なので、このところ毎晩寝る時に恐くなったりしていた。だから読み終わったからには速やかに処分したいのだが、コミックショックに持って行って、これ以上世間に災いをもたらすのに手を貸すのは御免だし、かといって焚書にするのも一応本である以上ためらわれるし。何かよい方法はないものか。

6月20日(火)

 ぐったりして早起きできず。胃痛(と思われるもの)は改善。タケプロン(よく効く胃薬)さまのおかげか、それとも睡眠の効果か。

 突発的に大学の自分の机を整理し、ついでに横の棚に領土を拡大する。じたばたと実験して、夕方から当直。

 韓国で医者のほとんどがストライキをしているらしい。韓国では医者にスト権が保障されているのか?と感心しかけたが、全くもって違法らしい。
 救急患者は診るらしいが、じゃあ体弱ってる入院患者がその日に微熱出したりしたらどうなるんだ、とか考え始めると気になる。どういう仕組みになってるんだろう。しかし、90%以上の医者が足並み揃えるとは。政府との間で何を戦っているのか知らないが、すごいよなあ。


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