5月22日(月)

 今日は実験はあまりせず、主に実験結果をエクセルいじって出していたので楽ちん。でも、明日は170サンプル予定。たいてい60サンプルくらいで嫌になりはじめ、90サンプルくらいで力尽きるので、たぶん無理だろうな。でも頑張る予定。

 夕方、教室の人達と、学外の講演会を聞きに行く。そこで、前の病院で一緒だった同級生の小児科の子と偶然会った。
「元気?なんか楽しそうやねえ」
「わかる?」
「うん。なんか生き生きしてる」
 そうか。やっぱりわかるのかあ。病院にいた時は、望んでいたこと(実験生活)をやっと(6年待った)できるとはいえ、きっとやってみたら嫌なことも多いだろうなと思っていたのだが、そんなことはなかった。基本的に楽しいものは楽しい。
 学生という気楽な身分であることが大きいのかもしれないし、単に前の生活が嫌だったからかもしれないけど。人付き合いは得意じゃないのに、大勢の患者さん、医者、コメディカルな人達と毎日会うは、心配症なので担当患者のことが常に気になるわ。24時間いつでも呼び出されるのもストレスたまるし。でも、勤めている時は、別にこんなもんだろうと思っていて、そんなに苦痛でもなかったんだけどな。ま、研修医には人権がないので、そんな生活と比べる方が悪いという話もある。
 同期で、まだ前の病院に勤めている子らは、やっぱり大変そうだった。しかし、後ろから見ただけで楽しそうにみえる私はいったい…。体から楽しさがにじみ出ているのね。

 青木みやさんのところでクローンの話。『クローン羊ドリー』を読んでないので話には加われないし、少し話もずれるのだが、私にはどうしても人間のクローンを作ってはいけない理由がわからない。社会的な位置付けの問題(戸籍とか犯罪摘発にかかわることなど)を除いて、何か問題があるのか。
 クローン人間を作って、そこから闇で臓器を摘出、なんてことが起こったら困る、という話を聞いたことがあるが、どうしてそこまでクローンに人権を認めない考え方になるのか。単なる人間じゃないか。一卵性双生児はどうなる。このまま人間のクローン研究を禁止していたら、闇でクローン研究が行われ、かえってクローンの人権が侵害されるのではないか、と思う。
 まあ、私は「君は無政府主義者だっ!」と倫理学のゼミの教授を叫ばせた、倫理観のない人間なので、一生わかんないのかもしれないけど。

5月23日(火)

 朝起きて、たまたま目についた『逆転世界』をぱらぱらと読み直したりする。いやあ、こういう本を読むと心が洗われる思いだ。
 洗われた心のおかげか、175サンプル片付けた。9時間かかった(予定通り)。いや、中国からスペインまで200年かけて移動することを思えば(←『逆転世界』ネタばれ)なんのその。その後解析。終えたころには思考力レベルがゼロまで落ちていた。まあいいや。結果はまずまずだったし、細かいことは明日考えよう。
 今日はチャイコフスキーの日と化していて、なぜかみんなチャイコフスキーばかりかけていた。おかげでまだフランス国歌が頭を廻っている。

 クローンの話。昨日書き忘れたのだが、クローン研究の中で、ヒトの受精卵の核を取り出すことに倫理的問題がある、という話は理解できる。その場合でも、私は受精直後の卵には人間としての権利を認めないが、認めるという考え方があることは理解できる。しかし、なんとなく、一般に「人間のクローンは禁止」というときには、核移植どうこうじゃなくて、クローンの存在自体が問題になっている気がするんだよな。

 ヒラノさん、わざわざ有り難うございました。ご意見もよくわかりました。私も聞いてるだけ、見てるだけで面白いんやからそれでええやん、と思うときもよくあったりします。

 のださん、適齢期同じですね。だからどうってことはないですけど(笑)。

5月24日(水)

 実験は第一段階を突破し(昨日のデータが良かったので)、新たな実験に突入予定。だというのに、飼っていた細胞に突然死なれてしまった。昨日まではお元気一杯だったのに。
 ところが、たまたま先週同学年の子に細胞を分けてあげていたので、分けた細胞を返してもらい、実験が4日ほどずれるという事態を避けることができた。情けは人のためならず、の実践。

 今日は特別講義で、ドイツ人のひとがやって来た。でかい。縦はさほどではないが、横幅はうちの先生の3倍。その割には顔が小さい。これが同じ人類かと、講義中まじまじと見てしまった。うちの研究室では、あんなにでかかったらたくさん食べるんだろうな、コストパフォーマンスが悪い、と不評だった。
5月25日(木)

 朝から健診バイト。7時45分にに京都駅周辺集合などととんでもないことを言われていたので、びびりながら就寝したのだが、やはり7時起きは厳しかった。いやあ、たった2か月でこうなるとは。
 7時35分に家を出て、信号が赤になるたびに無理矢理右折して西に向かいながら南下。51分に何とか京都駅まで辿り着く。
 そこから看護婦さんやら技師さんやら総勢20名ほどで車で移動、今日の健診先の某大手企業のビルに到着。すごく広くてきれいなところで、健診場所もフロア丸ごと一つ。こないだの銀行とはえらい違い。
 診察は小さい部屋をしきったところでするので、なんか隠れ家みたいでいい感じ。人が来なければ何をしてても周りから見えないので、合間に『銀河おさわがせマネー』を1ページぐらいずつ読みながら健診したりする。仕事中に本が読めるバイトってのはいいな。

 夕方にバイトを終えて、大学に戻る。学振の申込書を書こうと試みたがキレそうになる。ううう。

 クローンの話。「人間のクローンを禁止する理由の大元は、生理的嫌悪じゃないですか」とのことですが、私にはどうもわかりません。ただの人間を嫌悪する気持ちが。たしかに、同じ人のクローンが一時に100人も200人も生まれたらちょっと嫌かもしれないが、さすがにそういうことは今のところは規制されると思うし。
 クローンを一種の化け物のように扱う気持ちは理解しがたいし、そういう気持ちからクローン研究が規制されていると思うと、やっぱりどこかでクローンが生まれたときのことを考えてしまう。試験管ベビーのときも最初は嫌悪感を抱いた人がいたんだろうか。
 オリジナルの話も、もし今私のクローンが生まれたとしても、私は妹か子供のようにしか感じないと思うが、他の人はそうは思わないんだろうか。わからん。
 とぐちゃぐちゃ言っていても仕方がない。

 セミナーネットワーク部屋騒動は、何かすごいことになっているが(棲みわけ)、野尻さんの書き込みを読んで、私がいわゆるDASACON勢の人達に今まで感じていた違和感がわかったような気がした。
 「この人たちって、本読んでるだけでは?」という。
 文章的には、悪い意味のようだが、私は決して悪い意味で使っているわけではない。
 私は自ら進んで「SFで得た思考を実世界においても動かし、仲間を見つけてはそのベクトルをぶつけあう」ほどの気力と根性はないが、SFが好きだし(決して「SFも好き」なわけではない)、SFな話をするのも好きだ。私がHPを持っているのは、そこが「私はSFが好きなんです」と堂々と表明できる場である、というのが大きい。
 でも、いわゆるDASACON勢の人達はそういう訳じゃなくって、という話は今までさんざんされていたのだが(笑)、感覚的にやっとわかったような気がする。ヘレン・ケラーの水のような。

 『探偵の冬あるいはシャーロック・ホームズの絶望』が出たとは!是非読まなければ!!
 でも創元クライムクラブって単行本なんだろうか。単行本なら買えない(そんな本棚の余裕はない)。でも読みたいよう。

5月26日(金)

 朝家を出ると、隣の部屋のドアが開き、住人の外国の人が出てきて、これ、と手を差し出した。載っていたのは私の財布。ええ!
 原付の前のかごの中に置き去りにしてあったのを見つけ、保護していてくれたらしい。なんと親切な。なんたって、運転免許も学生証も銀行のカードも入れているのだ。盗まれでもしたら大変なことになる。
 たぶん、私のだという確信がなかったので、私が出てきたところを見計らって聞いてくれたのだと思うが、そんなことするのはとても大変。ありがたいことだ。それにしても、私の原付だとよく推測できたな。建物の前には20人くらいが自転車や原付を置いているというのに。

 家を出て、四条河原町の丸善へ。たぶんないだろうとは思ったが、やっぱりなかった『探偵の冬あるいはシャーロック・ホームズの絶望』。イズミヤまでいかなかった私が悪いんだけど。でも駸々堂ならあったかもしれないのに。
 ああ、駸々堂、どうして逝ってしまったの。丸善では生きていけないのよ。せめて京宝店だけでも復活させてくらさい。
 でも、『探偵の冬』はやっぱり単行本らしいので、どうせ買えないんだけど(しくしく)。

 ついでにゲーセンに寄ると、今度はたれぱんだ日和ということで、洗濯物にされてたり、ハンモックに揺られてるたれぱんだぬいぐるみがUFOキャッチャーに出ていた。あれなら大学の机に飾れる(吸盤が付いている)。欲しいよう!でも、ハンモックのは端に置いてあって絶対とれないし、他のもどうみても取りにくそうだった。くそぉ。毎日見に行こうかしら。欲しいよう!!

 実験では、ネズミさんに注射打ったりした。
 でも今日は前の病院の同僚たちと遊ぶ予定があるので、早く切り上げ、約束のお店へ。
 会うなりいきなり「なんだその眉は。形変わったな」と言われたりする。そういや辞める1週間ぐらい前にカットしてもらったんだったな。
 担当だった患者さんの話を聞いたりする。誰が亡くなっただの、退院しただの。私が救急でひいて担当して、回復して退院した患者さんが舞い戻ってきて大変だった話とか。
 あとは先生の噂話だの、今年から来るはずだった一年目の研修医が、一人国家試験に落ちて来れなくなったので、人手が足りなくなって大騒ぎになった話だの。国家試験恐るべし。9割は受かるとは言っても、確実に落ちる人は存在するわけで、一番受かって欲しいと祈っているのは労働力を当てにしている病院だよな。

 この頃、ERWのダグがお気に入り。顔はそれほど好みという訳ではないのだが、表情がいい感じ。ふふふ。

5月27日(土)

 1時頃田中邸に電話すると、たくさん人がいるらしいので、遊びに行く。行ってみると、テッセルはどんな姿か、とみんなで絵を書いていた。私は口に小さな歯が生えているものと思い込んでいたのだが、歯も爪もないらしい。

 どんな生物の絵を見てみたいか、と言われ、カンテンは?とか言っていたのだが、ふと思い出した。
 たしか火星の話で、小さいピラミッドがあって、少し進んだらそれよりちょっと大きいピラミッドがあって、その先にさらにちょっと大きいピラミッドが、と連なったピラミッド型の生物が出てくる短編。あれ、何だっけ?
 高校生の時はお気に入りで、物理実習室でピラミッド作って並べて遊んでた記憶があるんだけど。
 田中君も読んでたみたいだけど、作品名まで覚えてなかった。
 ご存知の方、どなたか教えて下さいませ。ああ、気になるう。

 だらだらと四方山話していたら(『宇宙消失』は表紙黄色にしたらもっと売れるかも、とか。実は細井さんは右翼だった、とか)明るくなってきてしまった。ごきぶりの話になったので、恐くなって5時過ぎに帰る。帰り途中は曇っているせいもあって、朝というより夕方な感じだった。

 12時過ぎに起きてだらだら。夕方大学へ。思っていたより細胞が増えてなかったので実験は3日延期。細胞への愛が足りなかったか。でも癌細胞なので可愛くないんだよな。こう見るからにがんだよおん、という感じで人相が悪い。

 夜明かししたり、雨だったりで、どうも体がおかしい。明後日はまた朝が早いというのに。心配だ。

 クローンの話。私がおろかでした。「原則として(クローン人間の作製を)不可能とする理由はどこにもない。しかし、だれもがそれを不快に思うだろう」。の「それ」はクローン人間を作るという人為的な操作を意味するんですね。すみません。読み間違えていました。
 人為的な操作に対する畏怖はわからないでもないです。私は不快には思いませんが(笑)。堕胎も臓器移植も顕微受精も遺伝子治療もみんな人為的な操作だし、結局どこまで許容するかの問題で、クローン作製だけ特別視する理由はないと思うのだが、どうやらそう思う人は少ないみたいですね。

 私も特にクローンを作る必要が今あるとは思わないが、気になるのは研究を全面的に禁止しているところ。クローンの何が問題なのかを問わないまま、なんか恐いみたいだし、他の国も禁止してるし、と禁止しているように見えるのには反発を感じる。特にこの頃の遺伝子組替食品への訳の分からない排撃を見るにつけ。
 でもまあ、もうこの辺でということですし。

5月28日(日)

 12時頃に電話で起こされるが、めげずにまた寝る。どうもしんどいのは、昨日の徹夜のせいか。

 夕方大学へ行って実験。しかし、結果が思わしくないので見なかったことにして、マガジンを買ってとっとと帰る。

 『銀河おさわがせマネー』を読み終わり。前作2作は読んだはずなんだけど、全然覚えてなかったりする。でも別に困らないしな。しかし、ジェットコースター乗りにわざわざ別の惑星まで行くというのは、いくらなんでもちょっと非経済的。

 友人がまた一人結婚。最早完全に嫁き遅れ気分。でも適齢期来年だし。

5月29日(月)

 一週間かけて「銀河おさわがせ」など読んでいたら、人が殺されるどろどろした話をどうしても読みたくなった。うーん、なんかやばい性格になってるような気がする。
 眠いのにどうも眠れず、取り置きのミステリを読みながら悶々とし、やっと寝たのが4時前、ところが今日はバイトなので7時起き、目が閉じそうになりながら原付でこないだと同じ健診バイト先の企業へ向かう。この前は途中で集合して行ったのだが、今日は直接自力で現地まで行くことにした。道は聞いたものの、きっと迷うに違いないと思い、どきどきしながら早めに出たのだが、目的地はあまりにも目立つ建物で周囲を圧して聳え立っていたので、全く迷う余地がなかった。

 今日は論文の抄読に当たっていたので、健診の合間に発表の下書きを作ったりする。隣で一緒に健診をしていた年配の医者(ちなみに女性)が、健診を受けに来る人すべてに「お尻は痛くないですか。血は出ないですか。痔はありませんか」と尋ねていたのがナゾだった。健診用紙にそんな項目はない。肛門科の医者で、統計でも取ろうとしているのか?あとで、教室の先輩に言ってみたら「痔フェチだ」と言われた。

 昼過ぎにバイトを終えて大学へ。実験結果はやっぱり思わしくなかった。別の実験に使う試薬の在庫がないことがわかり、そちらも大幅に延期が決定。その上寝不足のせいか吐気までして、実に踏んだり蹴ったり。本当は実験結果が悪いこともでもあり、論文検索などするべきなのだが、そこまで根性がないので、抄読会を終えると10時前に退散。

 青木みやさんのところのお話。「好奇心と想像力」は読ませていただいてます。

 今日の最大に面白かったニュース。神奈川県警の不祥事。「万死に値する」らしい。バラードも執行猶予付き懲役1年くらいに値するのね。

 あ、 細井さんは「SF」右翼です。念のため。それも時として、らしい。ちなみに私はイデア主義者のうえにSF右翼です(すげえ偏狭)。

5月30日(火)

 7時半に電話で起こされる。さらに9時にまた電話で起こされる。何の陰謀だー。寝かせてくれえ。
 結局11時近くまで浅い眠りをむさぼり、午前中はサボリを決め込む。

 1時からバイト。今先生が学会で不在なため、先生の身代わりに近所の某D大学の診療所に行くことになっていたのだ。
 近いと思って侮ったため、遅刻すれすれで到着。診療所は昔D大学との合同読書会の時に使った建物の別棟にあった。懐かしいなあ。

 先生から暇だ暇だと聞いていたのだが、診察時間が始まった途端、患者がひっきりなしにやって来た。それも怪我が多い。
 右足の指の怪我ばかり3人続いたりした。何なんだ、いったい。女の子ばかりで、全員段差のあるところでつまづいて足をぶつけたらしい。思うに、季節が良くなってきて、買ったばかりのミュールを履きだして、慣れない靴でつまづいて爪をはがすことになったんだな。私は普通の革靴(ヒール2、3cm)を履いていても段差のないところで足をひねったりするので、そげなものを履こうとは毛頭思わんが、世の中の人は気をつけた方がいいよな。
 ところで、私は関節の単純X線写真(骨頭がぐりぐりするところが気持ち悪い)と、爪がはがれている/はがすのは、どうも苦手なので、そんな人が3人続いて結構嫌だったりした。

 4時にバイトを終えて、ダッシュで大学へ。実験を大急ぎで済ませ(ますます訳の分からないデータが出た)当直先へ。こちらも規定時間ギリギリに着き、タイムカードを差しに走ると、後ろから同じく当直の人が走ってくる(この病院は大きいので当直医が何人もいる)。見ると同じ教室の先輩だった。おいおい。2人仲良く規定2分前に出勤。

 当直先で岩崎正吾『ハムレットの殺人一首』を読み終わり。主人公2人が意味もなく恋に落ち、それはまあいいとしても、誘いの言葉が「わたしの性的衝動をしずめて下さい」(しかも濡れ場はなし)はいくら何でもあんまり。百人一首やハムレットが出てくるわりには蘊蓄はなしで、何かちょっと悲しかった。他のところは結構面白かったのに。

 カウンタが4000を超えた。私が1番アクセス回数多いんだから、1度くらいぞろを踏んでもいいと思うのだが。

5月31日(水)

 12時過ぎには寝たので、やっと良眠。でも朝方に、頭痛がする→薬を探し回って飲んだら治る→すぐにまた頭痛がする、という夢を3回繰り返して見て、起きるとやっぱり頭が痛かったりした。

 当直先を出て大学へ。直明けの日は早起きするので、今日こそはと思い、大学病院の婦人科を受診することにした。生理痛の鎮痛剤をもらうためである。

 2年半前にかかっていたので大丈夫かと思っていたが、初診扱いになるらしい。受付の前で待っていたら、問診をとるために別室に呼ばれた。そこで私を呼んだのが学生であることに気付いた(名札の色と形で分かる)。水曜日がポリクリ(臨床実習)生が初診患者の問診取る日なのを忘れてたよ。
 いやあ、悪いことをした、と思いつつも、何しろカルテには前回私がこともあろうかポリクリの最中に生理痛で倒れ、そのまま婦人科に連れて行かれたことが書かれているので、隠すわけにもいかない。仕方なく、ここの大学の出身で医者で…と話すと、学生(男だった)は最初唖然としたあと、カルテをめくる手がぶるぶる震えだした。
 ごめんねえ、そりゃ問診するということで緊張しているところに(学生には初めての患者に接する機会がそんなにある訳ではないので)医者が(それも自分の大学の先輩が)現れたりしたら泣きそうだわな。私も初めて問診を取ったときは手が震えたもんなあ、相手は医者じゃなかったけど。

 んで、学生に問診を取られたということは、その後教授に診てもらうことになる。いきなり「何歳や、はよ結婚しいや」と言われる。この教授は好々爺という感じで面白く、女子学生には早く結婚するように、というのが口癖(女医は婚期が遅いというのと、婦人科的に見ても何かと早く結婚した方がいい、という考えから)な人で、学生にも結構人気があった。
 それから「診察する訳にもいかんしな。そや、ちょっとエコーで見よか」。学生実習も兼ねているので、何か手技を見せてあげないといけない。先ほど学生には可哀相なことをしたので、どうぞ実験台に使って下さい、と腹を出す。しかし子宮のエコーは結構きわどいところまで下腹を出すので(勿論タオルで隠すが)、学生は顔を赤らめて部屋から逃げようとしたりして、また気の毒だったり。でもまあ、その後教授から月経困難症の説明を受けてたし、勉強にはなったでしょう。許してくれ。
 ところで教授の学生への説明を聞いていて、新たな知識を得た。月経困難症には、子宮内膜症によるものと、原発性のものとあるのだが、私は検査結果や症状からみて自分は原発性だと判断していた。原発性というのは、早い話が原因不明ということで、プロスタグランディン(痛みの元の物質)の産生がなぜか普通の人より何倍も多い、という話は知っていたのだが、血中プロスタグランディン濃度には差がなくて、月経血中のプロスタグランディン濃度に何倍もの差があるらしい。昔聞いたような気もするが忘れていた。いや、教授の診察を受けた甲斐があった。
 ついでに、当初の目的の鎮痛剤も長期投与にしてもらったので、大量に出してもらうことができて幸せ。後で薬局で薬を受け取った時には思わずスキップ。この薬がなければ私はどうなっていたことだろう。

 その後は、ゆったり実験。実験結果が思わしくないので、「なんか効く遺伝子ないですかあ」と叫び散らしたりする。

 12時前に帰宅。廣瀬君が今は使わないマウスを家に持って帰ってきたというので、廣瀬邸にもらいに行く。今年の初めからマウスの調子が悪く、近頃は頻繁にフリーズして泣きそうだったので、実にありがたい。うおお、すいすい動くし、思ったところできちんと止まるぞ。

 ピート・ハウトマン『時の扉をあけて』は『マイナス・ゼロ』を思わせるプロットの時間SFの佳作なんだそうです。読まねば!それは読まねば!閉じる話は大好き。
 でもって、私は「まるでマイナス・ゼロみたいに精巧な時間ロジックの話だ」と言われても違和感は感じません。それはたぶん、長編と短編の違いだと思う。「時の門」も「輪廻の蛇」も好きだけど、やってのけたぞ万歳だけで終わっている感じがするので。

 岡田@前京フェス実行委員長閣下様が『イワン・デニーソヴィチの一日』を読んでいるらしい。素晴らしい、さあ、ソルジェニーツィンにはまろう!



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