3月21日(火)

 病院に行ったら、「先生3日間も顔を見せないで寂しいやんか」などとあちこちで文句を言われる。そういう文句を言う患者はたいてい元気で暇な人達で、休みの日に病院へ行っても、元気な患者にはわざわざ会いに行ったりはしないのだ。…連休という言葉知ってる?

 今日はいろんなことが重なる日だった。そもそも普段は月曜日にする採血が休日のために大挙して今日にずれこみ、骨髄穿刺の予定があり、カンファレンスがあり、緊急入院が2人あり、そのうち1人は結構重症で走り回り、ノーマークの別の患者が熱発し…。どうして一遍に今日起こるんだよ。

 仕事をばさばさと片付けて、夜は研修医送別会。カプリチョーザで開かれたのだが、食べ物の量が多い。これでもかとパスタやピザが出てきて、その後駄目押しで肉が出てくる。最後にデザートに巨大なケーキとアイスクリーム。食べ過ぎで気分が悪い。腹が裂けそう。べちっ。

3月22日(水)

 あと10日で病院から放免の身。一昨年の春は病院へ行くのが嫌で嫌で、原付の走行距離を見ては、まだ200kmしか走ってない、これが何kmになったら2年たつんだろう、とよく考えたものだが。今では走行距離7000km以上、あと10日間で病院へ行かなくていいと思うと、嬉しい。

 今日は同僚から「ベッドフリーか。担当患者を持たないなんて医者とは言えんぞ……いいなあ」と言われる。やっぱり羨ましいんじゃねえか。

 担当患者が、「同室の人がみんな明日退院するから私も明日退院する」と言い出した。みんな一緒ってわけにはいかねえんだよ、人によって病状違うだろうが。第一あんなに退院嫌がっていたじゃないか。ったく。

 今日は送別会2日目。全科の医者の送別会。疲れる。

3月23日(木)

 ノスカール(経口糖尿病薬)が販売中止になった。劇症肝炎(発症すると死亡率がとても高い)の副作用が問題となり、アメリカで販売中止になったため、日本でも急遽中止となったのだ。今朝の京都新聞には、「61人死亡」てな見出しで載っていた。そんなの前からわかっていたことで、それでもよく効くから定期的に肝機能の検査をするということで使われていたのに。なんだかなあ。
 糖尿病の先生はノスカールを飲んでいる外来患者に一人一人電話をかけ、服用を中止するように説明していた。そのおかげで今朝の糖尿病カンファレンスはほぼ中止。のほほんとしていたら、伏兵が。別の病気で治療中の私の患者さんが糖尿病で、ノスカールを飲んでいたのだ。今日から服用中止。そのおかげで治療計画がずれてしまった。よりにもよって今日販売中止になるとは。タイミングが悪い。

 そんなこんなで忙しく、病院をやめる準備が全然進まない。
 今日は送別会3日目、内科の送別会。挨拶で「最初の半年くらいは毎日働くのが嫌で嫌で……」と言ったら、後から同期で働き出した子に「俺もそうだった」としみじみ言われる。うおぉ、そうだったのか。

 ここの問題。こういうのって一方の意見だけを読んで肩入れすると、後で反対側の意見を知って穴に入りたくなることが多いのだが。『戦争の法』も『バルタザール』も、面白いという意見は周りでよく聞いたので読みたいとは思っていたのだが、ハードカバーは場所と金の問題からめったに買わない、文庫になったときには忘れている、ので、残念ながら読んだことはない。これで読んだことがあって素晴らしかったら、何も考えずに肩入れできるのに。
 でも肩入れしても私に出来ることは新潮社の本の不買(5年に1冊くらいしか買わないけど)ぐらいで、全然力ないけど。とりあえず、『戦争の法』とか手に入れるよう努力してみよう。

 DASACON3の参加申込が締切られている。kanataさんは締切りに間に合ったようだ。山尾悠子氏を目撃できるのね。すごい。

3月24日(金)

 ノルカール販売中止の余波2。私の担当患者の息子がノスカールを飲んでいて、昨日うちの病院から服薬を中止するように電話があったらしい。ところが家族は「朝っぱらから病院から電話とは、おばあちゃん(私の担当患者)が急変したに違いない」と思い大騒ぎになりかけた、と。そりゃそうだわな。その患者さんは「先生、今まで飲んでいたものを急に止めて大丈夫なんでしょうか」と私に聞くし。
 午後から救急当番。1人入院となってしまった。行きがかり上担当となる。でもこれで午後の救急当番は最後だもん。

 東野圭吾『宿命』を読み終わり。あのオチはちょっと。でも、好感がもてる小説だった。東野圭吾って『放課後』しか読んだことが(しかも乱歩賞受賞時に読んだきり)なかったのだが、ちょっと興味が。
 内容とは直接関係がないが、何より気に入ったのはルビが打ってあること。私は井伏鱒二訳の「ドリトル先生」シリーズを読んで育ったので、ルビが打ってある小説は無条件で面白いとインプリントされているのだ。どうしてもっとルビが打ってある本がないかな。

3月25日(土)

 髪を切りに行った。何ヶ月ぶりだろうか。少なくとも3ヶ月くらいは切りに行ってない。いやめんどくさいからじゃなくて、髪伸ばしてたからなんだけど。
 家の近くの初めてのところに行った。髪を切るのがはさみじゃなくて、私の好きなかみそり(髪を切る時に頭に感じる感触が気持ちいい)だったし、親の仇みたいに髪の毛梳いてくれたし、なかなか良いところだった。おかげで三つ編みができるくらい(梳いてもらわないと、まとめて1つの三つ編みをすると棍棒のようなものが出来上がる)髪の毛が少なくなった。これでバレッタもとばずにすむ。昔は自分が髪の毛が多いことを随分悲しんだものだが、この頃髪の毛が多いと言われなくなるほどまで梳いてくれる美容室に行き当たっているので幸せ。

 夕方リサイクルショップで1冊50円の青背とか白背とか桃背とか復刊銀背とか計17冊をゲット。

 今日は当直。穏やかな時間が過ぎる。
 9時から「八つ墓村」をみる。いきなり津山30人殺しのおじさんが出てきて、おっなかなか迫力あるやん、と思っていたら、刀で切ったり銃で撃ったりするたびに、「赤インク」がしゅびっと迸って、しかもそれが数秒で止まったりする。あまりの面白さに笑い転げてしまった。その後も、血が出る殺しの場面はみんなこれ。おかげで怖がりの私でも楽しくみることが出来た。これはあまりに陰惨になり過ぎるのを防ぐための映像効果なのか?
 それにしても、豊川悦司の金田一はいただけない。美形がわざと転びそうに走っても全然似合わない。やっぱりほどほどの古谷一行では?

3月26日(日)

 3時に入院が入って起こされたが、それ以外は平穏な当直。入院の処置をした後、5時半まで看護婦さんと話していたので眠い。どうでもいいけど「ビューティフルライフ」の杏子の病気はなんなんだ?というのは、医療関係者の誰もが思い浮かぶ疑問らしい。膠原病で足が不自由になって肺に腫瘍ができる病気。ドラマ出演者にのみ発症する新種の奇病説、が有力。

 東野圭吾『十字屋敷のピエロ』を読み終わり。結構面白かったけど、こういうのを「キャラクターが書けていない」というのか?、とちょっと思った。それとも書いてない、のかもしれないけど。
 『バルタザールの遍歴』を坂元君から借りて読んでいる。今のところ、かなりおもしろい。

 霧島那智HPのカウンタが廻りまくりで面白い。私みたいに他人の喧嘩を見物したい人は多いのね。

3月27日(月)

 髪が軽い。頭を前に振ると、髪が固まりではなく、いくつかの房となって落ちてくる!すごい!こうなることをどれだけ夢見てきたことか!やはり髪の量が少ないと、こうなるものなのね。
 理想の髪になってあまりにも嬉しいので、仕事中しきりに頭を振っては鏡を見ていた。馬鹿である。しかし馬鹿でもよい。20数年待ち望んだ瞬間がついにやってきたのだ!

 と浮かれてる場合ではなく、今日は当直。
 夕方はあまり患者が来なかった。胸痛、末梢神経障害、腹痛などを診て12時前に寝る。

 『バルタザールの遍歴』を読み終わり。最後の方が尻つぼみに思えてちょっと残念だったけど、面白かった。主人公達の父の死の場面が最高。それにしてもメルヒオールとバルタザールは一つの肉体の中にいる兄弟なんでしょ、と何の疑問もなく信じ込んでいたので、二重人格の話で、とか解説で言われると、それは違うんでは、とか思ってしまう。
 んで次は『戦争の法』だな。誰か貸してください。ってそれじゃあ意味がないけど売ってないもんなあ。まず読んでから気長に探したいものだ。
 しかし、作品が好きだから作者に肩入れとは言っても、やっぱり、絶版にしやがって、という気持ちよりは、どうして文庫で出たときに即座に買っておかなかったんだろう、という自責の念の方が強い。「えっ、あの作品が絶版」の積み重ねにより、私の中では「素晴らしい作品は絶版にはならない」という考えはあまりなく、どちらかと言えば「傑作は絶版になっている」という考えが強いらしい。

3月28日(火)

 30分も寝ないうちに呼ばれる。病棟で呼吸停止。別の病棟で血圧低下。外来に嘔吐の人とか。さらに別の病棟でも呼吸停止。明るくなってから、心不全に脳梗塞。こう、寝たと思ったら起こされるってのが一番厳しい。

 昼間は眼がうつろ。眠いぴょん。
 しんどいが自分では表面に出しているつもりはないのに、周りの人みんなが「先生大丈夫?」だの「しんどそうやね」だの心配そうに言ってくれるので、なんか病人のような気がしてくる。午後から鼻水が止まらないし、喉も痛いし咳も出るし。ついに風邪をひいたかも。

 早々に病院を飛び出し、本屋に寄る。『ワンダフル・ライフ』が文庫化されていたので買う。嬉しい。表紙がいまいちだけど。どうしてざらざらじゃないの?んでも前からオパビニア君の絵は欲しかったのでやっぱり嬉しい。
 三浦君はマガジンのバイトを止めたのね。4月からどうするの?

 読んでみたい名作アンケート問題(というより復刊願い問題)。ハヤカワで復刊してほしい作品は、たいてい古本で持ってるような気が。持ってないのは数年前の京フェスで失くした『スターシップと俳句』くらいで、それも復刊されて定価で買う気になるかというと…。ということで他人の不幸を省みなければ、アンケートなんてどうでもいいんだけど。でもそれってものすごおく利己的だよな…。

3月29日(水)

 午前中は最後の救急当番。大したことなく無事終わった。万歳。
 しかし、本格的に風邪。鼻水ずるずる。左耳の後ろに時々激痛が走る。くそお、今シーズンは大した風邪には罹らず乗り切ったと思っていたのに。患者さんが次々とインフルエンザになってもうつらなかったのにい。上司が風邪ひいてたからな、きっとあの風邪だ。

 今日は4月から行く研究室の歓送迎会。教授と同じテーブルで、ちゃんとしているつもりだったのだが、あからさまにしんどそうだったらしい。

 ちはらさんが4月1日に田中邸を訪問なさるそうで。でも、田中君はゴミを捨てないという特技の持ち主だから…覚悟していらしてね。

3月30日(木)

 引継ぎや、患者さんへの挨拶など。
 「あなたなら立派な医者になります。私は信じてます」と何の根拠もなく信じている患者さんとか。もう医者やめるんだってば。

 夜は研究室の所属グループの送迎会。ワインだったので、帰る頃から酔いが廻り出した。家に帰ってからのことはよく覚えてない。

3月31日(金)

 事務に行って保険証を返したり、麻薬施用者免許証を返してもらったり。4月から健康保険料を月2万円くらい払わなければいけないらしい。ひどいよう。でもいまさら扶養家族にも戻れんしなあ。
 残務整理をいろいろ。院内メールで退職の挨拶を流したり。横にいた同期の子が「2年間嫌で嫌で毎日辞めたいと思っていました。今日ついに辞めることができてとても幸せです。2度と来ることはないでしょう」と書けとしきりに薦める。そういうことは、来年の自分のときにやって下さい。私はうそつきなんでそんなことは書けません。

 雑用をすませて早退。さすがにちょっと名残惜しい気も。6年間通った大学よりも2年間の病院の方が滞在時間長かったんだしなあ。
 でも帰りにNTTの店に行って即座にポケベルを解約。ふふふ、これでもう連絡できまい。眠ったと思ったら鳴らされて「入院入ったのですぐ来て下さい」などという生活とはおさらばだ。ポケベルのコール音かと思い、TVの電子音におびえる習性もなおるに違いない。
 しかし、さすが年度末。私が解約手続きを待っている間にも、次々と数人がポケベルの解約に。ポケベルにくびきをつけられてる人は多いのね。それとも近くに医大があるせいか。

 そのあと、雨の中銀行行って、はんこ屋に行って、住民票移して、買い物行って……って、ふと気付く。風邪をひいている時にがんがん雨に濡れながら原付で走るのはよくないことだよな、普通。悪化するよう。

 夜はコロンボをみて、ERWをみる。
 コロンボはちょっとひどすぎ。そりゃ今すぐに死ぬか、殺人の証拠見せて逮捕されるか、どっちかにしろとか言われりゃ自供するわな。単なる脅しじゃないか。
 ERWは初回生放送だったそうなので、田中邸に電話してビデオに録ってもらった(うちのビデオは引越し以来復帰していない)。生放送っつうからいったいどんなことになってたのかと思いきや、普段のERより静止してしゃべるシーンが断然多く、なるほどという感じ。部長がいきなり心筋梗塞になっていた。

 『稲妻よ、聖なる星をめざせ!』を読み終わり。『飛翔せよ…』よりずっと面白かった。ロマンスシーンは相変わらずだけど、今回はもともと置かれていた生活状況が悪いわけで、機械人間と未来へ逃げるのも理解できる。ユーブが実際にどんなことするかもわかったし。
 でも、なぜ系図が書いてないんだあ!!
 ローン系かそうでないかだけが重要なんでしょうが。近親結婚繰り返してるんでしょうが。系図がなくてどうする!それとも書かないのは伏線なのか?
 自分で書いてみたけど、複婚OKで伯父だの叔母だの言われても確定できない。系図を書いてくれえ。じゃなきゃ書くのに十分な情報をくれえ。
 しかし、あの裏切りおやじのやることは納得できるような。一般人にとっては支配者がユーブでも、共感能力がなければひどいことされないから構わない訳で、近親婚を繰り返してやっと数人いるようなローン系に頼って戦争をする必然性はないわな。


過去の日記の目次に戻る。

日記に戻る。